彼と彼女と ページ17
ニュートの表情は変わらず怒っていたけれど、その声はどちらかと言えば傷付いて居るように聞こえた。
ただ感情のままに怒鳴られている方がましだと。問いかけるような静かな言葉は、どこまでも「守るべきもの」への正義があって、メラの手段はそれを踏みにじるものだったのだと。──けれど、だって。だからこそ。
「怖かったんだもの」
「え、」
ポツリ。メラが落とすように溢した言葉は地面に吸い込まれた。消えた声の代わり。黄金色の瞳から涙の玉が溢れて頬を伝った。
まさか泣くとは思って居なかったのか、ニュートが僅かにたじろぐ。反射で上がったらしい両手は何の意味も持たず、ボロボロと落ちていく涙をなすすべも無く見ていた。
「貴方が死刑だって聞かされた時、本当にゾッとしたわ。私が理由に成るって気付いた時だって。
怖かった。だけど一番怖かったのは、現実を見てもマスターと離れたくなかった自分よ。守られてばっかで何も返せないのに、リスクを背負わせるだけなのに、それでも一緒に居たかったって。
ナーラクの元に行くって自分で言ったのに、すぐに後悔し始めた自分が!
ずっとずっと私は自分勝手でわがままで、自分を殺せない。殺せないの!」
───それじゃ貴方の側に居る資格なんて無いの。
最後の言葉は涙混じりで、消え入るように震えていた。ニュートの顔からすでに怒りは抜け落ちていて、代わりに盛大な焦りだけがそこにはあった。
「ま、待ってメラ、お願い泣かないで。何か、そう───君は何か思い違いしてる!僕の側に居る資格?そんなのあるわけが」
「少なくとも私はマスターの損にしかならないじゃない!それなのに──何で、何でよ」
「何でって……メラだから」
何故ここまでデメリットしか無くてなお、自分を手放さないのか。彼の持つ「動物への博愛」と同じようなものなのか。それこそ子供みたいに"なぜ"と問うたメラに返ってきた返事は、想定していた言葉のどれとも違っていた。
可哀想だったから。居場所が他に無いから。助けた責任とか、優しさのようなものとか。てっきり抽象的な言葉が返ってくるものだと。
なのにニュートは他に答えを思い付かないような顔をして、良く分からない表情になったメラを──逆に不思議そうに見ていた。
それ以外にあるのかと言わんばかりに。
「私、だから?」
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とーふ(プロフ) - 心情の変化を細かく描いてくださっているので、場面が変わるごとに私自身も感情が変わってました笑 素敵な作品をありがとうございます。少しずつ関わり方も変わるのかな?と思いながら、更新を心待ちにしております! (2022年4月10日 0時) (レス) @page31 id: ab5a3330b3 (このIDを非表示/違反報告)
時々雨(プロフ) - スクイブってマグルにも魔法族にも何にもなれぬとても難しい位置にいるんだと感じました。なかなか進展しなそうな難しい恋ですね、これからどうなるのか楽しみです♪ (2022年1月29日 8時) (レス) @page31 id: 6532c97378 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede.0807(プロフ) - めっちゃ好きな作品です!更新楽しみに待ってます!! (2020年11月15日 20時) (レス) id: 3d85b18928 (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon - 取引のところで泣きました……夢主の気持ちが心に刺さりました……あとニュートがかっこいい……更新頑張ってください!! (2020年6月17日 23時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!私事で更新が間延びしてしまいましたが、これからものんびり更新していく予定です!ニュートと夢主の行く末を何卒これからもよろしくお願いします!! (2019年10月22日 17時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2019年2月3日 19時