ナーラクと決断 ページ15
最後の言葉はほとんど絶叫に近かった。
ニュートが鋭く息を呑む音が聞こえた。後ろに彼の手があるのは知っていたけれど、僅かにでも見えないように頑なに前を向いていた。
──見てしまったら、泣いてしまいそうな気がしたのだ。
泣いてしまうのは卑怯だ。「迷惑に成りたくない」と表面だけ取り繕って、「止めて」と雄弁に叫んでいるのと同じことだ。
「彼に情報を渡して」
「ほォ、存外気の強え女だな、血ヘド吐いてたガキが」
満足げに口角を上げたナーラクが指を一振りし、宙で金をかき混ぜる。溶けたようなそれが体の周りを浮遊して、意外にも冷たく首に巻き付いた。
売り物としての印を付けてようやく、ナーラクは重い口を開く。
「目に見えない何かが、五番街をめちゃくちゃにしてたってよ。メイシーズ・デパートに、お探しのモンがいるかもな」
───ドゥーガルだ。ニュートの呟いた言葉と同じ文字が脳裏に踊った。だけど、もうそれも関係の無くなる事だった。
もうニュートと魔法動物の世話をすることも、逃げた子達を追いかける事も無いのだ。──この先ずっと、もう2度と。
思わず首輪に指をかけて、喉を僅かに潰した指の感触がどうしようもなく苦しくて、痛くて!
「……グレイブス」
「あ?」
「マクーザに居たあの男は?私の事を知ってたわ。知りすぎてる位。彼はグリンデルバルドの信奉者?」
少しでも情報を残して行かなくては。出来ることがそれしか無いのなら。役に立てたと信じなくては、きっと気が狂ってしまう。
──あぁ、だけど私、わたしね、本当は!
唇を噛み締める少女を見てナーラクは笑った。金の鎖を引き摺って、ギザギザの歯を剥き出しにして。
「そりゃ命取りだぜ。それこそスキャマンダーを失う事になる」
地獄の使者のような含み笑いに合わせて、屋敷しもべ妖精のカン高い悲鳴が店の中に響きわたった。
「マクーザが来る!」
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とーふ(プロフ) - 心情の変化を細かく描いてくださっているので、場面が変わるごとに私自身も感情が変わってました笑 素敵な作品をありがとうございます。少しずつ関わり方も変わるのかな?と思いながら、更新を心待ちにしております! (2022年4月10日 0時) (レス) @page31 id: ab5a3330b3 (このIDを非表示/違反報告)
時々雨(プロフ) - スクイブってマグルにも魔法族にも何にもなれぬとても難しい位置にいるんだと感じました。なかなか進展しなそうな難しい恋ですね、これからどうなるのか楽しみです♪ (2022年1月29日 8時) (レス) @page31 id: 6532c97378 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede.0807(プロフ) - めっちゃ好きな作品です!更新楽しみに待ってます!! (2020年11月15日 20時) (レス) id: 3d85b18928 (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon - 取引のところで泣きました……夢主の気持ちが心に刺さりました……あとニュートがかっこいい……更新頑張ってください!! (2020年6月17日 23時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!私事で更新が間延びしてしまいましたが、これからものんびり更新していく予定です!ニュートと夢主の行く末を何卒これからもよろしくお願いします!! (2019年10月22日 17時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2019年2月3日 19時