魔女とスクイブ ページ25
「スクイブってね、笑えるくらいに夢がないの。
脆弱で貧弱で、出来損ないの魔法族。魔法が当たり前の世界で何も出来なくて、なのにマグルみたいに魔法無しに生きる術も知らない。
私は杖が欲しかったわ。魔法学校に行きたかったし、呪文も唱えてみたかった。小さい時に魔法でこんな失敗して怒られたのって、友達と笑いあってみたかった。
でも、10才の誕生日にも魔法は使えなくて、学校から手紙は来なかったわ。当たり前だけどね」
どこの寮になるだろう。
パパとママと買い物に行ったの。
ペットは何にしようか。
そんな話からも仲間外れだった。そもそもメラは家でも外でも見つけたら暇潰しに苛められるような……のろまなカエルみたいな役回りだったし、何を言い返しても「魔法が使えない」だけで決定的な弱者だったのだ。
気持ちや努力じゃどうにもならない。
誰もが出来ることがどうしたって出来ない。メラの知る世界では魔法で全ての優劣が決まるのに。
「私が私として産まれた以上、一生このままバカにされ続けるって思ったの。何でこんな貧乏クジ引かせたのって。やり直させてって神様に祈って。
ーーーでもね、どうしたって死ぬまで私は私だから。だから魔が差したのね」
「それで……ドラゴンの心臓の琴線を食べた?」
「そう。杖の芯を食べたら魔法が使えるかもって。今思えばいじめっ子のからかいだったけど、その時は本当に青天の霹靂だったのよ」
絶対に凄い魔女になれるって。皆を見返せるって本気で信じて飲み込んだの。それを。
懐かしむような顔でメラは頬の鱗をつついた。キャメルのポンチョをするりと脱いで、ブラウス越しの奇妙な骨格にそっと触れる。
「人生なんて
マスターは与えてくれる人。
知らない世界をいっぱいいっぱい教えてくれて、どんなものでも魅力的に見せてくれた。マスターの使う魔法は全部素敵で、……ううん、あの人そのものが魔法みたいなの。
こんな幸せ、惨めなスクイブじゃあり得なかった事だわ」
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とーふ(プロフ) - 心情の変化を細かく描いてくださっているので、場面が変わるごとに私自身も感情が変わってました笑 素敵な作品をありがとうございます。少しずつ関わり方も変わるのかな?と思いながら、更新を心待ちにしております! (2022年4月10日 0時) (レス) @page31 id: ab5a3330b3 (このIDを非表示/違反報告)
時々雨(プロフ) - スクイブってマグルにも魔法族にも何にもなれぬとても難しい位置にいるんだと感じました。なかなか進展しなそうな難しい恋ですね、これからどうなるのか楽しみです♪ (2022年1月29日 8時) (レス) @page31 id: 6532c97378 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede.0807(プロフ) - めっちゃ好きな作品です!更新楽しみに待ってます!! (2020年11月15日 20時) (レス) id: 3d85b18928 (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon - 取引のところで泣きました……夢主の気持ちが心に刺さりました……あとニュートがかっこいい……更新頑張ってください!! (2020年6月17日 23時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!私事で更新が間延びしてしまいましたが、これからものんびり更新していく予定です!ニュートと夢主の行く末を何卒これからもよろしくお願いします!! (2019年10月22日 17時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2019年2月3日 19時