エルンペントと求愛 ページ39
.
「お見事、二人とも。
……それにコワルスキーさん、メラを受け止めてくれてありがとう。本当はエルンペントよりタフかもしれないけど……ほら、女の子だから」
「マスター?一言多いわ。い つ も!!」
「えっと……一応レディ扱いのつもりだったんだけど」
「だったらエルンペント引き合いに出すこと無いでしょ!」
何度見ても女心の分からない父親とおませな娘。ジェイコブはもはや微笑ましさ半分、苦笑半分でこの風変わりな旅人達の掛け合いを見ていた。
メラの立場からすれば哀れみ極まるが、見ている分には可愛らしい。……多分。
「二人とも、ジェイコブでいいよ」
こんな経験を共にして、ジェイコブだけ他人行儀に呼ばれるのも違う気がして、彼は手を差し出して改めて名乗る。ニュートがその手を握り返して、メラはジェイコブ、と口の中で繰り返した。
「ジェイコブ……ふふ、マグルのお友達って始めてよ」
「そりゃ嬉しいね」
はにかむメラの見た目相応な子供らしさに、ニュートとジェイコブの口元が緩む。ジェイコブが思わずメラの頭を撫でようとした……その瞬間。
ついに身体が冷えきったのか、彼女は大きく身体を震わせてくしゃみをした。
くしゅんと可愛らしい音に合わせて噴出する青い炎。火花を散らしたそれは積る雪をクレーター状に抉って地面を焼く。──殆どジェイコブの手は間一髪だった。
「……お、おい。火も吹くの?」
「あ、そうそう言い忘れてたよ。彼女がくしゃみしそうだったら一メートルは離れて。
スウェーデン・ショート・スナウト種なんだと思うんだけど……あのドラゴンの炎は人間の骨まで消し炭にしちゃうから」
ジェイコブの口角がひくりとひきつるのを横目に、ニュートがメラにブルーのコートを掛ける。
さらりと気遣う英国紳士の行動。それこそメラが日頃求めているものだったが、いざしてもらえると顔が熱くて言葉が出てこない。
「あ、あ、……あた、温かいわね!」
「良かった、風邪引いたら大変だからね」
「ひかっ……引かないわ!」
釣られた魚のようにぱくぱく口を動かす彼女を、いよいよ哀れむ目でジェイコブが見た。──成る程、メラはニュートと違うベクトルで感情表現が下手らしい。
「さて、二匹捕獲、あと一匹。
──1度トランクに戻ろうか、温まらないと」
420人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時