エルンペントと求愛 ページ38
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「──
酩酊して飛び込んで来るエルンペント、全力で逃げるジェイコブとメラ。呪文をかけて止めようと振り上げた杖まで動物園のヒヒに横取りされ、ニュートは思わず叫んだ。
「嘘でしょ嘘でしょ……もう!」
メラが冷たい空気を吸い込み吼え声を上げて見るものの、広い屋外では反響が無い分効果が薄かった。積る雪に音が吸収され、エルンペントの勢いも弱まらない。
ジェイコブを先に走らせ、突進してくる大きな体を両手を広げて受け止めてみる。──大型動物が暴れた時にたまに取る手段だ。
小さな体に激突した角にしがみつき、エルンペントのつぶらな瞳の前にぶら下がる。吠え、暴れ、何とか振り落とそうとする動きにひたすら耐え、進路を妨害するのだ。
本来なら角に突かれた時点で即死、それを免れても少しでも皮膚に傷がつけばそこから回る毒液で破裂する。頑丈なメラで無ければ出来ない荒業だった。──基本メラでもエルンペント相手にこれは禁じられて居たが……
「おじさまに突き刺さるよりはマシでしょ──待ってあんまりマシじゃないかも」
「ニュート!──おい、嘘だろ」
視界が塞げても嗅覚までは妨害できない。エルンペントは感覚でジェイコブの場所を探り当て、彼のぶら下がる木にメラごと激突した。
勢いでジェイコブは凍った湖に放り出され、串刺しを寸でで避けたメラは、エルンペントのぷよぷよと光る頭上に乗り上げる。
視界が開けたエルンペントは一直線にジェイコブに向かい、杖を取り返したらしいニュートは凍結した湖面を見事に滑りながらトランクを全開に開けた。
「メラ!」
ニュートの合図にメラは再度、息を大きく吸って咆哮した。──今度は耳元で。
エルンペントが氷上を滑りながら硬直し、ジェイコブに直撃しそうだった勢いが僅かに弱まった。その隙に背後に躍り出たニュートが、物理法則を完全に無視してトランクにその大きな体を吸い込んで行く。
完全に吸い込まれるその瞬間、慌てて飛び降りたメラをジェイコブが受け止めた。舐めるようなエルンペントの声が、トランクが閉まる寸前まで響く。
ニュートがトランクの鍵をかけてようやく、その場にはがらんとした空間と静けさが戻った。
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みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時