始まり ページ1
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───メラ・フィルチはハラハラしていた。
厚手のベージュポンチョに揃いのロングスカート。何処と無くまばらに短くなった、チョコレート色のウェーブヘア。全体的に色彩が茶系に纏まる中、退廃的なブルーがリボンとしてちょこんとシャツに付いている。
そんな装いの10か其処らの少女は両手を後ろで組み、居心悪そうに目の前の税関役人と旅の主を交互に見ていた。
青いコートを着込んだ
「ニューヨークは始めてか?」
「はい」
「食べ物は入っていないか?」
「……ええ」
「生き物は?」
「修理しなくては───あ、いいえ」
────何で挙動不審なの!
メラは真横に立つご主人──ニュート・スキャマンダーのあからさまな狼狽を嘆いた。
役人とニュートの間には、年季の入った一つのトランク。表向きには旅行用具と、がらくたしか入っていない「事になっている」代物だ。
本当の中身はといえば、生き物は?と聞かれた途端に申し訳程度の笑みが凍り、壊れているトランクの金具が空いた瞬間にすかさず閉めなくてはならず、中身を見せる時には魔法を駆使して空間を切り替えなくてはならないモノとしか言えないが……
お願いだからもう少し堂々としていて欲しいと言うのが、メラの切実な願いだった。マグル用の切り替えが無ければ普通に捕まっている。あっても多分まだ怪しまれてる。
「ところで重ね重ね失礼だが、そちらの娘さんの診断書か何かはあるかね?」
「診断───え、何って?」
「医者の診断書。あんたの娘さん、顔や首に随分と変わったあざが有るみたいだから。街に変な病気を持ち込まれては敵わない」
唐突な役人の言葉に、ニュートは困惑気味にメラを見る。彼女の右頬や首にかけて、鱗にも似た青色の歪な円が幾つも散っていた。
光の加減でチラチラと色味を変えるそれは成る程、奇病のあざに見えなくも無い。
ニュートが目で語る。
──僕はどう答えればいい?
どうもこうも無いわよとメラは嘆息し、頬のアザをぺらりと剥がして見せた。硬く、鈍く光る青がこれ見よがしに落ちる。
「前の駅で買ってもらったオモチャよ、おじさま。面白いから付けてたの」
メラの無邪気な発言に、今度こそ呆れたような顔をした役人が、彼女とニュートを交互に見てパスポートを差し出した。
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みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時