トランクと断罪 ページ42
「……彼女って?」
ニュートは口を半分開けた奇妙な顔で、さも知らないと言う風にとぼけて見せるが──面識のあるティナに通じる筈もなかった。
「庇っても無駄よ。貴方の同行人のメラ───ねぇ、彼女のファミリーネームは?」
今になってフルネームを聞いていない事に気がついたティナが口を止める。しかし、それだけで充分だった。「メラ」と彼女が溢した名前に、イギリス大臣が血相を変えて立ち上がる。
「スキャマンダー、メラと言ったか?君の同行人が?
まさか、メラ・フィルチか!?」
「……いいえ、どうして?
「その子」は何年も前に死んだ子でしょう。貴方も葬儀で追悼の意を示した筈だ、お忘れですか?
大体、どうやって死人を同行人に?」
ニュートの言葉にティナは思わず息を呑み、ジェイコブはポカンと口を開けた。唐突な疑惑の域を出ないティナに対して、本人から名乗られたジェイコブの衝撃はひとしおだった。
───メラは確かに名乗ったのだ、イギリス大臣が言った名を!
当然、ジェイコブがこの流れで口に出せる筈もない。ニュートはティナを懇願の眼差しで見据え、何も言い返せずに居る大臣に「同行人は何も知らない」と言い募った。
周りの注意を別の物に引き付けようと、視線を動かしたニュートはぴたりと動きを止める。絶句、と言う言葉が相応しい事態が、映像としてホールの中央に浮いていた。
無惨に全身が傷付けられた、男の変死体が。
「……なんて事に」
「貴方のどの動物の仕業かおわかりでしょうね?スキャマンダーさん」
「いえ……動物の仕業じゃない……お分かりの筈です!あの印が何よりの証拠だ……
オブスキュラスの仕業です!」
途端、議会はニュートの「同行人」への興味を失い、茫然自失の騒ぎが起きる。ある意味彼の思い通りであったが、状況を好転させると言う意味では完全に「失敗」に終わった。
「全員逮捕しなさい!」
ピッカリー議長は認められない指摘に激昂し、グレイブスにニュートのトランクを取り上げるように命じる。途端、飛び交う呪文でティナも含めた3人は膝をついて拘束され、問答無用で杖まで取り上げられた。
自らの手を離れていく大切なトランクに、ニュートは叫んだ。──だってそれは、その中には!
「動物たちを傷つけないで下さい、カバンの中には危険な動物なんかいません!その子たちを傷つけないで──危険じゃないんだ!」
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みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時