月刊 HELLO 【特別号】 (ページ6)

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夢を喰え！“番外編─首無しの人が遊ぶ遊園地。前編譚─” ページ6

【夢を喰え！“番外編─首無しの人が遊ぶ遊園地。前編譚─”】

著者：しろかさん(白雪の鴉亭)

夢とは人々の思いの塊で成っている。

それは、願望、希望、欲望、絶望……

ありとあらゆる思いで形成される。

そして、その思いが強ければ強いほど夢の強制力は強くなる。

夢世界と云うものはそう言うモノ。

二年前、夢見ヶ丘市を中心に静かに夢世界を形成し閉じ籠る病気が蔓延し始めた。

そして、今、世界的に大流行した眠り姫病を食い止めるため夢でアクションを起こせる能力者、夢喰人ユメクイと夢へ案内することのできる者夢獏バク達は立ち上がった。

これは、夢を見て閉じ籠っている人々達を叩き起こすための物語。

の、番外編である。

──

ここは、某県夢見ヶ丘市ゆめみがおかし中心部にある中央病院。眠り姫病ねむりひめびょう患者を収容する隔離病棟の一室に二人の女がいた。

「行くぞ、茜あかね」
「了解です！奏かなで！」
ワイシャツの上に薄い紫のニットを着た茶髪のポニーテールの女性『市村奏いちむらかなで』が、隣にいた和洋折衷を着た少女、『千宮司茜せんぐうじあかね』に合図を出す。
　すると、茜は眠っている患者に手を掲げ口をモゴモゴと動かす。するとその場だけ空間が歪み始め気がつくと真夜中の遊園地のゲート前に立っていた。

　市村の姿は変わっており、緑色の髪。触覚はある。緑のパーカーにジーンズのショートパンツに藍色のサスペンダー。靴下は縞模様であるが左右違っていた。そして、灰色のスニーカー。

極め付けには黒猫の耳と尻尾が直に生えていた。

「いくらこの世界に来てこの姿になるって言うのだけはなれないね」
黒い尻尾をゆらゆらと揺らしながら無表情で呟くと茜がにこにこしながらこちらの方を見てきた。
「いいじゃないですか！だって、猫さんですよ？可愛いです！」
その言葉を聞いて市村はハァ……と溜め息をつくと何も言わずゲートの向こうへと歩きだした。
慌てて茜もその後を追う。申し訳なさそうにでも笑いながらこう言った。

「照れてるんですか！？デレてても可愛いですよ！奏！」
「止めろ。これ以上言うな。仕事夢喰いに支障が出る」
「はぁーい」

チラッと茜が市村の横を見ると彼女は耳まで真っ赤になっていた。

──やっぱり、奏は初々しいなぁ……

そう思いながら彼女は市村の後をスキップしながら後を追った。

この後、彼女達自身に起こる悲惨な事など知る由も無く。

───