月刊 HELLO 【特別号】 (ページ9)

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Happy Snappy Deadman's West. ページ9

『それじゃあ、そろそろ今日の１曲と行こうか。Ｐ.Ｎお肉大好きさんからのリクエスト＿』

　アーティストと曲名が告げられて、音楽が流れだす。
　アコースティックギターの音色と、爽やかなボーカル。今日みたいな夏日和に似合う、とても陽気な曲だ。

「ギル、ギルバート！おい、いるんだろ!? 返事しろ！」

　リクライニングチェアの背もたれを倒して、少しうとうとしようとした時だった。焦燥感溢れる怒鳴り声と共に、玄関が激しくノックされたのは。
　…なんだよまったく、人がいい気持ちでくつろいでるってのに。騒々しいったらありゃしねぇ。

「ギルバート・ビースレイ!!」
「なんだよ、うるさいな」

　俺はため息混じりにラジオを止める。
　そのまま玄関に行って扉を開ければ、友人は一瞬ホッとした顔を見せてから、すぐに表情を変えた。そして、こう言い放つ。

「馬鹿野郎、のんきにラジオなんか聴いてる場合か!?」
「たまの休みだ、俺が何してようが勝手だろ」

　そう、たまの休みだ。
　支援物資の護送任務を終えて、ようやく壁の内側に帰って来たのだ。のんきにラジオを聴いて何が悪い？

「感染者だ！今しがた壁が突破された、さっさと逃げないとヤツらが来るぞ!!」
「…冗談」
「言ってねぇ！」

　俺は友人を押しのけて外に出る。
　突破された？え？シェルターは安全なはずだろう？
　兵士が守ってるし、高い壁も電気の流れた鉄線もある。
　あのバカ、ついにカレンダーも読めなくなったのか？今日はエイプリルフールだろ？

だけど、あいつは嘘なんかついていなかった。目の前に広がるパニック映画さながらの光景に、俺は１人、呆然と立ち尽くした。
　あちこちから聞こえる銃声、逃げ惑う人々。

「…マジかよ」
「マジだよ。ほら、さっさとコレ持て。逃げるぞ」
「逃げるって、どこに？」
「地下だよ、地下！とにかく、さっさと逃げないとヤバい！」

　避難用のリュックとラジオ、リボルバーとマガジンベルトポーチを持って家を飛び出す。

　キラキラと太陽が輝く、夏日和の今日。
　シェルター・ウェストが壊滅するなんて、一体誰が考えただろうか。

【 Happy Snappy Deadman's West. 】end

イラスト→←Happy Snappy Deadman's West.