言葉 ページ12
【言葉】
詩人：ふぃろ
｢哲学的な愚痴」
寂れた商店街の
寂れた居酒屋に立ち寄った
客も少ないその居酒屋は
深夜帯になると
この店を随分気に入っているらしい
サラリーマンがやって来て
安い酒を酔い潰れるまで呑んで
愚痴を吐くんだそうだ
嘔吐するように吐くんだそうだ
居酒屋の店主が語った
「彼の愚痴は哲学的なのだ」と
誰も知らない人生哲学が
その居酒屋で毎晩のように吐き出されて
翌朝には忘れられるらしい
「インターネット」
インターネットは監視社会だ
あんたも気づいているんだろう
それが正しいと思うのかい
はあ そうか
否定も肯定もしないよ
煮え切らないって怒るかい
怒っていいさ
言葉とは感情そのものだ
言葉とは君そのものだ
だから何一つ否定しないのさ
あゝ、でも人を殺してはいけないよ
君とて死にたくないだろう
「捨てられていた言葉」
ゴミ捨て場に捨てられていた言葉があった
僕は思わず拾ったよ
それはそれは薄汚れていた
ドブの臭いもしていたさ
必要なくなったんだろうか
意味不明だけど
どこか叙情的な言葉の羅列だ
「黒歴史」とか「厨二病」なんて呼んで
捨て去ってしまったんだろうな
勿体無いな
拾って帰ってやるか
「道」
僕らには言葉があった
ナイフであり 盾であり
恋人であり 友人であり
家族であり ライバルである
言葉があった
綺麗な言葉によって敷かれたレールと
決して綺麗とは言えない言葉によって切り拓かれた獣道
どちらを選ぶでもいいさ
僕は好きなように喋っていたいから
きっと獣道をゆくだろう
「語るは言葉」
通行人が携帯越しに語る言葉
殺人鬼が犯行後に語る言葉
僕が僕である事 証明するも言葉
悪人も善人気取りも
くそったれな世俗共も僕も
命の思想も哲学も
無宗教も有神論も
語るは言葉
本音も嘘も言葉
世界は言葉
なのかも知れない
僕には分からない
というのも言葉
言葉にならない
というのも言葉
続く
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