Ep.29 味覚 ページ29
「……そうだね」
どこか他人事のような口調で肯定の言葉を囁く。
それを皮切りにAは続けた。
「ねえ江戸川くん。人間が味覚で感じ取るのは甘味、苦味、酸味、塩味、旨味の五つ。辛味は味覚じゃなくて痛覚や温覚で感じるものだって知ってた？」
「……うん」
「辛味は分かるんだ。どちらかというと痛みだけどね。それでも完全な無味よりはまだ味気があるもんでさ、時々こういうのが欲しくなる」
「だけど、辛み成分であるカプサイシンの受容体を頻繁に使うほど感覚は鈍くなる……つまり辛い物を食べれば食べるほど辛味を感じる部分は麻痺する。そのうち辛いのもよくわからなくなっちゃうよ」
「あはは、私の味覚事情まで心配しなくていいよ」
笑って、静かに息をつく。
「砂を噛むみたいな食事はつくづく面倒でね……身体に良くないのは分かってんだけど」
「外では甘いものばっかり食べてるしね……。フリーランスでも定期的に健康診断とか受けた方がいいんじゃない？」
「大丈夫！ 家でも甘いものばっかり食べてるから！」
何が大丈夫なんだよ。呆れが湧いたその直後、Aはあっけらかんと、まるでなんでもないことのようにこう言った。
「ま、とはいえ私が失ったのは味覚だけ。身体が小さくなっちゃった高校生探偵くんに比べればよっぽどマシだと思うよ」
背中を殴られたような衝撃を覚えた。声が詰まる。
まさか……あり得なくはないと思っていたけれど、本当に知っていたのか。それともカマをかけているだけ……？
だがAはコナンの反応にもあまり興味を示さず淡々と続けた。
「偶然じゃないよ。なんせ私は一年前から調べ続けてるんだから！ キミをそんな身体にした悪い組織のことをね」
「……やっぱりそうだったか」
そうなのではないかと予感はしていた。だが確かな証拠はなかった。彼女の口から聞くまでは。
彼女が公安の命令を蹴るほどに執着していた相手は、コナンにとっても打ち倒すべき敵である「黒ずくめの組織」だったのだ。
ただ、そう言った割にAのスタンスは妙に軽いような、楽観的な感じが窺える。
「もう気付いてると思うけど、私の目的は……キミと奴らをぶつけ合わせることだった」
短いタバコを指先でもてあそびながら、語り聞かせるような口調で言う。
「正確には、キミと繋がってるFBIチーム含めた『江戸川くん陣営』まるごとね。そうすればさすがに連中も困るだろうと思ってさ」
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (
レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(ｴﾓｼﾞｼｸｼﾞｯﾀﾀﾒｻｲｿｳｲﾀｼﾏｽ) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます！！！！！( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして！ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい！！ (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2022年11月25日 16時
