情報の対価はスイーツで！【名探偵コナン】

Ep.26 時間稼ぎ ページ26

────扉を荒々しく蹴破る音が部屋じゅうに響く。

突入したサングラスの男は、銃を構え薄暗い室内を見渡した。

スタンダードクラスの部屋にベッドが二台、閉められたカーテン、空のゴミ箱。人の気配はまるでない。

「チッ……逃げやがったか！」

乱雑に部屋の中を捜索しながら通信をはかる。

「アニキ、先手を取られやした……奴ァ逃げたらしい」

『部屋の様子は？』

「チリひとつ残っていやせん。ゴミ箱は空、タオル類も使った形跡はなし、ベッドにも同じく痕跡なし。バスルームも乾ききって……」

『……撤収しろ。こちらの動きが読まれている』

「へ、へい……」

ひととおり部屋の中を調べてから踵を返し、出入口扉の前で足を止めた。

何かが落ちている。一見ゴミのようだが入ってきたときには見なかったものだ。

「これは……！ クソが、ドアが開いたら落ちるように仕掛けてやがったのか！」

苦々しく呟き、拾ったそれを再度床へ放りすかさず踏み潰す。パキリと確かな感触があったが、なんの気休めにもならない。

「ナメやがって……！」

────────────

盗聴器からの音が途切れる。

「あーあ、高いのに。まあいいけど」

イヤホンを取ってポケットにねじ込む。

どうやら奴らも“ヤマアラシ”の根城を探っているようだけれど、残念ながらそこにはもう私はいない。そろそろ来る頃だろうと思ったのでとっくに逃げ出している。

丁寧に痕跡を消し去り、挑発まがいの盗聴器をわざと見つかるようにして部屋に残し、一時間前にはもう今いる場所に着いていた。

もう少し、時間稼ぎをさせてくれ。

まだタイミングよくないからさ。

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