Ep.04 ケーキの価値 ページ4
「あ、ありがとうございました!」
「いーよいーよ、私が気に食わなかっただけなんだから……」
集団がそそくさと遠くへ消えたあと、蘭と園子が頭を下げるとニット帽の女性はやはりまたニコニコと愛想のいい笑顔で片手を振った。
「いえ、本当に助かりました!」
「でもどうしてすぐ他人をバカにしたがるんだろ、ああいう奴らって!」
「そうだね……いろいろと余裕がない人達なんだろうけど、私でもあの言い方はちょっと……」
いかにも難しそうに眉を寄せて、女性は語気を強める。
「あんなの、まるでスイーツは一人で食べるほどの価値なんてないって言ってるようなものだよ!」
「そこ!?」
「バカにされたことじゃなくて!?」
「あの連中はこのケーキの価値が分かってない! そんなにカラフルな画が欲しいなら紙粘土でも食っときゃいいのに!」
「か、紙粘土……」
「ねえお姉さん、ちょっと聞いてもいい?」
と、腕を組んでため息を吐く女性へコナンが問いかけた。
すると女性はコナンの存在に初めて気づいたのか、丸い目をしてしばし見つめた。
「……」
「……お姉さん?」
「ああ、うん。なあに?」
「気になったんだ。どうしてお姉さん、あの人たちが割り込んでくる前から動画を撮ってたの?」
「あ、確かに……」
「なあんだ、そのことか」
行列が少し短くなる。蘭たちは紙袋を持って数歩進むが、女性の荷物は背中のボディバッグひとつのようだった。
肩越しに振り返りながら人差し指を立て、彼女はこう説明した。
「実は最初からちょっと気になってたんだ。初めに並んでた人、一人にしては荷物が多すぎたし……私の後ろに並ぶ直前に電話をかけて、『今から並ぶ』って言ってすぐ切ったの。なんとなくこうなる気もしてたんだよね」
「へえー……」
「じゃあもうひとついい? お姉さんが言ってた『Rêves et désirs』っていうお店を調べてみたら、姫系ロリータを扱うブランドショップって書いてあるんだ。でもお姉さんはどちらかというと……」
「コラ! アンタね、人の趣味に口出ししてんじゃ……」
「アハハ、いいよ! キミはこう言いたいんだね。『本当にそのお店の店員さんの顔を覚えてたの?』って」
「うん。それに……」
そのとき、いつの間にか行列の先頭に来ていた女性へスタッフが声をかけた。
「次のお客様……えーと、四名様でしょうか?」
女性がきょとんとコナンたちを振り返った。
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上坂 - 夢主好き💛 (2023年1月19日 21時) (レス) @page14 id: f311cd81c1 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主好き💜 (2023年1月4日 18時) (レス) @page32 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - ( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆(エモジシクジッタタメサイソウイタシマス) (2022年12月13日 3時) (レス) id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - おめでとうございます!!!!!( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆ (2022年12月13日 3時) (レス) @page25 id: 6fdcf214e0 (このIDを非表示/違反報告)
なぎ(プロフ) - はじめまして!ほろにがクラゲ★様いつもの楽しみに読ませていただいております。本当にコナンの世界に出てきそうな感じの夢主さんでこれからの展開にワクワクしております。卒業試験頑張って下さい!! (2022年12月1日 15時) (レス) @page13 id: 33a5069289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年11月25日 16時