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Ep.156 悪魔の言葉 ページ6

「……爆破……? それじゃあ……」

「……」

父さんは黙っていた。それは事実の裏付けだった。

ベルモットは、私の存在がボックにとって弱味になることを察していたのだ。

ともすれば私たちが親子関係にあると気付いているのかもしれない。

それに対して父さんも手を打ったのだろう。私を傷付けるつもりなら、船ごと爆破して何もかも沈めてやると脅した。

けれどベルモットは分かっていた。私の安全が保証されない限り、船を沈めることなどできやしないと。そして協力者になりうる人間を先に始末することでさらに先手を取った。

「大丈夫、ちゃんとこの子は守ってあげるわ。まだ利用価値があるもの」

「……そうか」

愉悦を含んだ悪魔の言葉に、ボックはただそう返した。

何かを諦めたような殊勝な態度。体格に見合わぬ覇気のない雰囲気。報いとして訪れる死を受け入れ、一足先に自分のものとしてしまったかのような物分かりの良さ。

それで確信した。

────コイツ、全然その気ねえな。

「(白々しい……けど、そう見えるのは私だけか)」

私の知ってる父さんは、自分の悪行のせいで買った恨みでさえ完膚なきまでに跳ね返すような奴だ。他人の領域を土足で踏み荒らしておいて、自分の大切なものは人並みに守ろうとするズルい男が、こんなところで大人しく死ぬわけがない。

それに……まったく血というのは厄介なもので、父さんが何をしようとしていたのかも大体分かってしまった。

「ここで殺すの?」

顔を上げ、対峙する。彼女の存在感の前で私はあまりにちっぽけだ。

美しさのあまり目の前に立つのも恐れ多い。こんな父親でいいならどうぞと差し出してやりたいが、今はさすがにそうも行かない。

「ええ、そうよ。邪魔をするならあなたも……」

「じゃあその前にちょっと訂正させて、ベルモット」

銃口も続く言葉も無視して私は言う。

「私の知ってるボックって男はさ」

半歩後ろへ下がった。

「────爆発騒ぎのたびにいちいち娘の身を保証するような人間じゃなかった」

それが合図だった。

大きな音とともに船全体が揺れた。立っていられないほどの大きな揺れの中、聞いたことのない警報音が鳴り響く。

「なッ……!?」

「ベルモット!」

私は廊下の先から声を張った。

さすがに驚愕の表情で彼女はこちらを見て、私はあるものを目の前に掲げた。

「もうひとつ。あなたが探してるAPTX4869はここにあるよ」

Ep.157 戦闘不能→←Ep.155 聞きたくない声



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サラキ(プロフ) - 完結おめでとうございます。長期間の連載、本当にお疲れ様でした。とても素敵な作品を読ませて頂いてありがとうございます。これからも応援しています。 (2022年10月17日 16時) (レス) @page24 id: 8b491ab3be (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールでこの作品を投稿してくださり本当にありがとうございます。知ったのは遅かったですが、完結前に応援を出来たこととても嬉しく思います。 ほろにがクラゲ様 の今後の活動を心より応援しております。本当に長い間お疲れ様でした。 (2022年10月11日 17時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - わざわざ返信ありがとうございます!ログインしていない時にコメントしたのでIDは違いますが、本人です。私も文を見返してアホだなぁと笑ってしまいました🤭 (2022年10月6日 21時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです(~*ˊ꒳ˋ*)~ ちょっとでもリアリティを感じてもらえたらと書いております☺️すみません、突然の誤字にちょっと笑ってしまいましたw (2022年10月3日 10時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
m - 文、変に語彙ってしまいました。すみません🙇‍♀️ (2022年9月28日 4時) (レス) @page3 id: 721fbfd58e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年9月27日 16時

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