JK探偵はそのメタ推理に命を賭ける【名探偵コナン】

Ep.172 辿り着いたのは ページ22

────米花町二丁目二十一番地。

どうやら記憶は正しかったようだ。世良さんを見送ったその足で向かったのは、今まで住んでいたマンションではなく米花町二丁目のとある洋館。

そう、工藤邸である。

「(ここしかないよな……やっぱ)」

コナンは後で連絡すると言ったが、スマホは着替えや他の荷物とともに沈みゆく船のキャビンに置きっぱなしにしてきたのだから、私が単独行動しているうちは連絡の取りようがない。

ではどこを頼るべきか。そう考えたとき、彼が一番信頼していそうなのがこの家でこの人だと思った。

「……にしてもなんなんだこの広さ？」

ホラーゲームの舞台にしたら二時間もののマップとストーリーが出来上がるぞ。これが人気推理作家と伝説の大女優と高校生探偵の家か。

ひととおり外観を眺めてから門扉横のインターフォンを押す。マイクとスピーカーだけの古めかしい機種だが、ここにあるとそれすら味に見えてくる。

さて、二階のカーテンが動いていたから、招き入れてくれるかどうかは彼……沖矢昴の判断次第だな。

それとなく周囲を気にしながら大人しく待っていると、スピーカーからホワイトノイズが走った。

「あ。すみません、私……」

『どうぞ、入ってください』

え、と聞き返す前にノイズが途切れた。

用件も名乗りも口にする前の即答。まるで私が来ることを分かっていたかのような応対、となればコナンから話が通ってる可能性が高い。ここへ辿り着いたのはどうやら間違いではなかったようだ。

────入れと言うなら、遠慮なく。

錠の開いていた門扉を押し開け、インターロッキングの玄関アプローチを進む。

扉をノックしてから一拍おいて片側の取っ手を引く。重厚感は見た目だけではないらしく、立て付けは問題ないが扉そのものがなかなかの重さだった。

後ろ手に閉めながら室内を眺め回す。中へ入ろうとして違和感を覚えたのは靴を脱ぐスペースがないせいか。

「……ガチ洋館……」

と、そのとき奥の方から出てくる人影が見えた。

そういえばこの人とはずっと前に一度会ったきりだったっけ。姿を現した沖矢昴に、軽く頭を下げた。

「どうも。眼鏡ショップの件以来……ですね」

「ええ、お久しぶりです」

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