Ep.168 生死不明の裏切り者 ページ18
いやあ、いろいろあった。
本当にいろいろあった。たった五日間、されど五日間。夏の思い出というにはちょっとバイオレンスな時間だった。
ボートを降りてすぐ、私は逃げるように客船ターミナルを抜け出した。一刻も早く、そして人目につかないようこの場を離れなければならない。私は生死不明の裏切り者なのだから。
煤や汚れはなんとかなったが、近くで見れば服はひどい有様。電車で帰るには悪目立ちしそうだな。
あれこれ考えながら街の方へ歩を進めていたそのとき、不意にすぐそばでクラクションの音が短く鳴った。
顔を上げる。大さん橋へ続く一本道には救急車やパトカーが多く止まっていたが、今この近くにいるのは、あの青いバイク一台……。
「(青い……バイク?)」
反対車線に停車した、カーキ色のジェットヘルメットを被った細身のライダーがこちらを見ていた。もしかしてと左右を確認してから道路を渡る。
私が近寄ると彼女はヘルメットのバイザーを上げた。
「やあ! また会ったね、JK探偵くん?」
「って……世良さん? どうしてこんな所に?」
「たまたまこっちの方に用があってね……コナンくんたちの乗る船が今日着くってのは知ってたんだけど、ネットニュースを見て様子を見に来たんだ。無事でよかったよ」
「……はは……」
すみません、それうちのクソ親父のせいです────とは言えず笑って誤魔化す。
世良さんはキョロキョロとあたりを見回し「コナンくんや蘭くんたちとは一緒じゃないのか?」と首を傾げた。
「うん、ちょっとね」
「けどキミだけ抜け出したみたいにココにいるんだな。まだみんなあの中で立ち往生してるみたいなのに」
「……あまり長居したくないんだ。できればここで私と会ったことは……」
「……」
「……なにか?」
「ああいや、話は聞いてたよ。なんていうか……キミこそ何かあったんじゃないか?」
なぜか話の途中でじっと顔を見つめられ、居心地悪さから逃げるために理由を尋ねると、前に会ったときと変わらない朗らかな態度でそう尋ね返された。
「なんで?」
「うーん……なんか、顔つきが変わった気がしてさ」
「って言われても……いろいろありすぎてどれのことやら」
「あはは! じゃ、これからゆっくり聞かせてよ。これから米花に帰るんだろ?」
「え?」
「ボクもこれから帰るとこなんだ!」
そう言って投げ寄越してきたのはどこかで見たことあるハーフヘルメット。反射的に胸の前で受け止める。
Ep.169 彼女の振る舞い→←Ep.167 グラスに生けた薔薇
1723人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サラキ(プロフ) - 完結おめでとうございます。長期間の連載、本当にお疲れ様でした。とても素敵な作品を読ませて頂いてありがとうございます。これからも応援しています。 (2022年10月17日 16時) (レス) @page24 id: 8b491ab3be (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 完結おめでとうございます。占いツクールでこの作品を投稿してくださり本当にありがとうございます。知ったのは遅かったですが、完結前に応援を出来たこととても嬉しく思います。 ほろにがクラゲ様 の今後の活動を心より応援しております。本当に長い間お疲れ様でした。 (2022年10月11日 17時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - わざわざ返信ありがとうございます!ログインしていない時にコメントしたのでIDは違いますが、本人です。私も文を見返してアホだなぁと笑ってしまいました🤭 (2022年10月6日 21時) (レス) id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとっても嬉しいです(~*ˊ꒳ˋ*)~ ちょっとでもリアリティを感じてもらえたらと書いております☺️すみません、突然の誤字にちょっと笑ってしまいましたw (2022年10月3日 10時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
m - 文、変に語彙ってしまいました。すみません🙇♀️ (2022年9月28日 4時) (レス) @page3 id: 721fbfd58e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年9月27日 16時