メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.136 他人頼り ページ36

かくして私の運命は彼に託された。

……のだが、他人に託した自分の運命をハラハラ見守るような暇はなかった。

「……ってことだよね？ 目暮警部」

「そうだな……となると、正確な犯行時刻は……」

「だとしたらA姉ちゃんにはムリだよ！ 目撃証言と照らし合わせると、その時間はこのデッキの……」

「た、確かに……」

船中を歩き回っていた私の行動と、各所の目撃証言、防犯カメラの映像、その他論理的に見出したいくつかの情報を照らし合わせ、彼はものの見事に「AAによる犯行は不可能である」という事実を誰にでも明らかな形で浮かび上がらせた。

アリバイが証明され、私は晴れて容疑者から外れた。同時にこの事件が船の上で解決することはないと確信したが、それはこの際仕方のないことだ。

捜査の方針変更を満足気に見守るコナンにちらりと横目をやり、正直な感想を伝えた。

「凄いね」

「そうか？」

「私だけならこう上手くはいかない。おかげで助かったよ。ありがとね、信じてくれて」

「別にオレはただ探偵として……」

「論理的な訳があったのだとしても」

単純な話だけど、私は少し、嬉しかった。

「ありがとう」

彼は毒気の抜かれたような顔をしたあと、無愛想に「そーかよ」と呟いてそっぽを向いた。照れ隠しだと思いたい。

「……それでいいだろ」

目が合わないままそう言われ、言葉の意味が分からず首を傾げる。

「そうやって頼れる時は頼ればいいだろ。個々の能力に個人差はあっても、全部を一人で完璧にこなせる人間なんていねーし……得意なことや苦手なことは人それぞれ違うんだからさ」

「……もしかして気にしてくれてる？」

「ま、オメーはよりによって“他人頼り”ってのが苦手みたいだしな……」

「結構あなたのことは頼ってると思うけど」

「最終手段としてだろ」

「それは……うーん……」

ハッキリ否定出来ずに頭の中で彼の言葉を巡らせて、そうなのかもしれないと思った。

元来、私は他力よりも自力を信頼しがちなたちだ。

いざと言うとき助けを得るための人望を日々積み重ねるより、一人で目の前の壁を乗り越える努力の方が向いていたから。

確かにそれだけではどうにもならないこともあったが、少なくともその方向性を変えようと思うほどの挫折は今までなかったし、今後も変える気はない。

けど……なんとなく、彼の言葉は胸に留めておくことにした。

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