メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.124 無事に済むとは思えない ページ24

「水平線上の陰謀では警察の出動、絶海の探偵では自衛隊……船が出ればヘリも出る割合が体感的に高い。対して小さい船や日帰りクルーズだとそのまま陸に戻ることが多い」

「え……なに？ ストラテジー？ プライベートアイ？」

「今回の船にはすでに捜査二課が乗ってるけど、たぶん必要になるのは鑑識と捜査一課。そうなればごく自然な流れで警察のヘリコプターが船に降りてくる」

「ま、待て！ お前さっきから何の話してんだよ！？」

「他でもないこの世界の話だよ。ああ、船上の事件でよくあることと言えばもうひとつ……」

私は思い立って階段の下り口へ向かった。「関係者以外立ち入り禁止」と立て札があるのを無視して。

後ろから声が追いかけてくる。

「おい、そっちは関係者以外立ち入り禁止……」

「じゃないと意味がない。設置するのも人目につくし、乗客やクルーに見付かってしまうリスクがある。何より船の機動に関わる重要機関はこの先に密集してる。沈没させるつもりなら爆破するのは動力関係、照明を落とすなら配電盤、どちらも機関室内か周辺にある」

「爆破……？ 奴らはこの船を沈める気なのか！？」

「さあ。けど、もしそのつもりがあったらマズイから」

「……確かに、船を爆破されたら乗客は一人残らず救命艇に乗る。そこを狙われる可能性がないとは言えないが……いくらなんでもそこまでやるか？」

「そうでなくとも、誰が何を企んでるかなんて把握出来ない。不測の事態は極力先回りして避けよう」

「けど、奴らじゃないならいったい誰が……」

「知らない」

「はあ？」

「誰かは知らない。そんな奴がいるのかも知らない。けど、私は五日間にも渡るこの航海が無事に済むとは思えないんだ。確認だけはしておきたい」

「……じゃあアンタは組織の件がなくてもそうしたってのかよ」

「そうだな……考えてみて。今まであなたが乗った大型客船、あるいは艦艇、飛行機、飛行船、その他公共交通機関……それらが誰かの思惑によって破壊、脱線、沈没、墜落の危機に晒されたことは？」

「え？ まあ、そういうこともあったけど……」

「……あの頻度でその感想？ 正気？」

階段を降りる途中から声を潜め、足音も立てないよう慎重に緑色の床を進んだ。

やがて覗き込んだのは機関室だった。

あたりの壁を地中に伸びる木の根のように配管が埋めつくし、機関や操作盤のカバーが無機質に、見ようによっては煩雑に、そして文字通り機械的に散見する。

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