メタ推理が役に立たないJK探偵の本懐【名探偵コナン】

Ep.119 笑い声 ページ19

「……えっ？」

「おま……ダッサ！ 江戸川必殺シュート喰らってやんの！ ふ、うふははは、ざまぁみろ」

……なぜこの人は腹を抱えて笑っているんだ。

不気味な笑い声を零しながらもAはようやく立ち上がって、手を引くコナンに今度こそすんなり着いてくるようだった。

船内へ入って階段をいくらか降り、ディナー会場よりもさらに下層、ラウンジやクラブのあるフロアまで来てからようやく歩を緩める。途中にも何度か背後を気にしたが追ってくる様子はなかった。

「……A姉ちゃん」

その一言に込められた意味を強いてひとつに絞り込むなら、それを敢えて別の言葉に替えて言うなら、「いい加減にして」と言い換えるのが最も正しかった。

なぜならここまでたどり着く最中、Aはひとしきり笑うと落ち着いたようで「はあ……」と息をつくのだが、どうもすぐに思い出し笑いに転化してしまうらしく、愉快そうに噴き出すのだ。いくらなんでもこの温度差にはたまったものではない。

「はー……あはは、ごめ……ふふ……」

「なんなのいったい……」

「面白くて……面白すぎて……」

「……ねえ、あの人は誰？ どうしてA姉ちゃんを殺そうとしてたの？」

「あー……」

少しすると貼り付けたような口元の笑みだけを残してその問いに答えた。

「……親父だよ。あれは」

「親父？ ……父親ってこと？ じゃあ……」

彼女は父親に殺されかけていたのか。

言葉にするのを躊躇ったが、Aはそれを見透かしたのかどうか、次いでこう言った。

「とはいえ元々他人みたいなものだったし、それは別に……。でも、何でだろうね。どうしてこうなったのかな……」

「……」

「…………いや、ホントに何でだ？」

「ん？」

「アイツが私を殺す理由って何……？ だって父さんはそもそも私を……そうだ、言ってたよな……『この状況を作り出すべく』って……ここまでするだけの気概があって、どうして急に私を殺すって結論に至ったんだ……？」

彼女の言葉には少なからず何らかの感傷が含まれているようにも聞こえたが、ふとしたある瞬間、論理的な"疑問"に移行した。しばらく聞こえるか聞こえないかの独り言を呟いていたAだったが、やがて上の空のような視線をおもむろに滑らせ、ゆっくりとコナンを見返した。

その目はどこか光っているふうにも見えた。

ずっと前からそこにあった宝石に初めて気が付いた少女のように。

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