Ep.101 計算のうち ページ1
「部屋での調査中、何かありましたか?」
続きの言葉を口にする前にそう問われた。あったに決まってるだろ。
「突然現れた男に殴りかかられましたよ」
「それはそれは、災難でしたね」
他人事すぎる。
「それより私に部屋を調べさせたのはこの封筒が目的ですか? 中身は暗号のようでしたが。となればバーにいたあの男は事件に無関係な情報提供者などではなく、単に連中の一味でしょうね」
「その通り。いろいろと有用な話を聞けましたよ」
「いったいどうしてそんな……いや、それより、荒れた部屋と昏倒した男を片付けないと。私ひとりではあれを運べません」
「僕は
跳ね除けるような声に口を噤む。
「(放っておけ、って意味か……)」
憶測だが、私が撃退した男は「連絡役」だったのだと思う。この封筒を部屋の主へ届けるのが仕事だったが、そこでちょうどマスターキーで侵入する私を見かけ、危険人物と判断し慌てて排除を試みたわけだ。我ながら見事な返り討ちに終わったが。
しかしあのままの状態で放っておけば、部屋の主が扉を開けた瞬間、異常事態が起きていることには少なくとも気付かれてしまうだろう。
連中に手を打たせる隙を与えないためには、今すぐ部屋に戻って徹底的に痕跡を消し去るか、そもそも悟られる前にこちらから仕掛けるしかない。いや、仕掛けるだけではダメだ。確実に叩き潰さねば。一時的にでも組織の目から逃れられるような相手だ、中途半端につつけばまた離散して逃げられてしまう。後者の手を選ぶのならば無計画とも言えるほどのスピードと同時に警察もドン引きレベルの周到さが求められる。
だが……それをやってしまうのだろうな、この組織なら。
私は黙って封筒から手を離した。
もしこれの中身が掃討作戦の鍵だとしたら、そんな起爆装置を手元に置いておきたくはなかった。
とあれば、私が部屋で連絡役と鉢合わせることは初めから計算のうちで、初めに偽物の資料を渡し、嘘の情報を教えたのもそのためかもしれない。目的はおそらく単純に……。
……なるほど、いい性格をしている。
そうするうちエレベーターが降下をやめ、扉を両側に開いた。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 莉久さん» わーありがとうございます❗無理なく書いてるものなので、無理なくお楽しみいただければ嬉しいです٩(*´∀`*)۶ キッド様のキザさ、出せているでしょうか…!?🙄(不安) (2022年8月29日 18時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - こんにちは!なかなか時間が取れなくて、ちびちび読んでたんですけど、めっちゃくちゃ面白いです!素直に言って好きです。大好きです。コナンとも打ち解けて、……これからの展開が楽しみです!キッドがキザッ!好きッ!忙しいとは思いますが、更新頑張ってください! (2022年8月28日 16時) (レス) id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - サワーさん» わわっ、最初からずっと…!お付き合いありがとうございます!お飲みくださる方々に楽しんでいただければそれが何よりです、最後まで頑張ります!💪 (2022年8月26日 17時) (レス) id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - ずっと最初から読んでいた小説がついにクライマックス…!これまでずっと書き続けてくださってありがとうございます!これからもご自身のペースで無理せず書き続けて頂ければと思います!私も毎回楽しみにしています! (2022年8月25日 22時) (レス) @page45 id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 推しの財布さん» コメントありがとうございます!段々ややこしくなってきてしまったなと心配していたのでお褒めの言葉とっても嬉しいです…ε-(´∀`*)✨ (2022年7月24日 22時) (レス) @page31 id: 5ce108a39e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2022年3月11日 12時