Ep.42 高校生と少女 ページ42
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米花駅からほど近い場所に店舗を構える、全国チェーンのシティホテル。
部屋数は三百を超える大規模なホテルでも、六月の閑散期ともなれば宿泊客はそう多くない。ロビーは時折人が行き交う程度で、夕食には早い時間帯ということもあり、壁沿いに並んだ休憩スペースはほとんどが空間を彩るインテリアと化していた。
「しっかし、こんな時間に部屋の清掃なんてさー……勘弁してほしいよなぁ。着替えるヒマもなかったじゃんか」
手元の雑誌のページを送りながら、宿泊客の高校生が不満げに口を尖らせる。
混み合ってこそいないが建物に比例してロビーは広い。カウンターのフロントスタッフも、チェックインを終えてエレベーターホールへ向かう客も、その声を聞き付けて注意を向ける者はいなかった。
肘掛のついた椅子はロビーの中央を正面にして、もう一脚の椅子と対面する形で、小テーブルを挟み向かい合っている。
ロビーに背を向けた方の椅子が喋りだした。
「どうやら昼間にトラブルがあったらしい。表の様子を見るに、まだ日本警察がホテル内をうろついているな」
ロビー側からは一見誰も座っていないように見える椅子には、高い背もたれに隠れて、一人の少女が腰掛けていた。物騒な気配がする話に雑誌から目を外して顔を上げる。
「警察? ママは何か知らないのか?」
「宿泊客の不審死だ、それ以上は知らん。無関係な厄介事に首を突っ込むほど暇ではないのでな」
「でも、無関係じゃないとしたら……」
「
少女はすました顔で俯き、先程買ったばかりの、テイクアウトのコーヒーを啜った。
また雑誌に意識を戻そうとした時、ちょうどホテルのロビーに足を踏み入れる人影が目に留まった。同じくらいの歳の女の子だ。この辺りでは見ない変わった制服の上に、夏物ではなさそうなパーカーを羽織り、手には綺麗なカバンとミスマッチなコンビニの袋を提げている。
「……あ。あの子、昨日すれ違った……」
「あの女子高生か?」
「うわっ、なんで見えてるんだよ。後ろに目でもついてる? 」
「馬鹿か。暗くしたスマホの液晶に写っている」
「……っていうか、どうも隣の部屋みたいなんだよな。あれってどこの学校だ? ここらじゃ見ないけど……」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時