メタ推理で犯人当てたらJK探偵とか呼ばれだした【名探偵コナン】

Ep.35 三人の容疑者 ページ35

遺体やその周辺、部屋中を調べる沖矢昴。それを部屋の端から見ていると、入口からおずおずと声をかけてくる女性店員がいた。

「あの……あなた方は？」

もっともである。

ただの客です、警察は呼びました。私は簡潔にそう伝える。

「警察って……寺橋さん、まさか亡くなってるんですか！？」

驚いて声を高くする女性店員。胸元のネームプレートには「小野目」とあった。

「ええっ！？ そんな……！」

慌てて検眼室の遺体へ駆け寄ろうとする男性店員。名前は「鏡山」。

「救急車、呼んだんでしょうね！？」

私がさっき電話を借りようと声をかけた女性店員、「竹視」。

そしてそれらを宥めすかす沖矢……目の前の光景を一枚の写真のように眺めながら、ひとつ気が付いたことがあった。

この三人、名前に関連性がある。目、鏡、視……全てメガネに関係する字だ。

みんな珍しい苗字だ、偶然とは考えにくい。人事部や店長が名前で人を採っているということもないだろう。

思い当たる可能性はひとつ。

名探偵コナン各回に登場する関係者の名は、大抵いつも共通のテーマをもじって名付けられているのである。

「三人の容疑者……か」

口の中で転がすように呟き、被害者である女性店員の胸元を見ると、他のスタッフと同じようにネームプレートで「寺橋」とあった。

よくよく考えたらこれもメガネ関係かもしれない。

「橋」がメガネのブリッジのことだとしたら、「寺」は……テンプル？ 寺という意味もあるが、メガネのツルの部分のことをそう呼ぶのだ。

……メタ要素だな。

スイッチが切り替わるように、私の中の何かが変わったような気がした。それは例えるなら、誰かが描いた漫画を読むみたいな、現実から一歩引いた世界単位でやや客観的な視点。

昨日、殺人現場を目撃したあの時も……。

「その通りです」

「え？」

「この状況下で被害者を殺すことが出来た人間は、あの三人しかいない。僕も同意見ですよ」

なんだ、藪から棒に。というかなぜ私の考えを……。内心混乱を覚える。まさかさっきの独り言が聞こえていたとでも言うのか。

私が何も言えないでいると、「まるで探偵ですね」と付け足された。

そういえば、この世界の頭脳派キャラにしては珍しく、沖矢昴は探偵を自称していない。だから意図としては「我々が(・・・)探偵のようだ」と言いたかったのかもしれないが────

「私は違います」

とだけ、返した。

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