Ep.34 鋭い悲鳴 ページ34
偶然が続くなんてもんじゃない。なんだこれは? 仕組まれてるのか? 背筋にゾッと来るものがある。
「確かに、登校中にメガネを紛失、あるいは壊してしまった……という話でもなさそうですが……」
「……どうして?」
「簡単なことですよ。生活や勉学に影響を及ぼすほどの近視なら、その距離では値札の数字も判別できないでしょう?」
あ、たしかに。
他人の観察ならまだしも、自分のこととなると単純なことにも気が付けない。
「ああ……うん、コンタクト……」
「話せる事情であればお伺いしても? 細かいことが気になってしまう性分でね」
「……」
本当に細かいな。呑気にそんなことを思う自分に、小さな笑いがこぼれた。勝手に毒気を抜かれたような気がして、笑いながら答える。
「……サボりじゃないんですよ。ホントは。行きたくても行けないだけ」
「行きたくても……?」
「メガネもそう。取りに行けない所に置いてきちゃったから、新しいのが必要で。でも高いんですね、こういうとこのメガネって」
値札が見えない方がよかったかも。冗談混じりにそう答えて、今度はこちらから聞き返してみた。
「あなたはどうしてメガネを見に?」
「ああ……実は昨日、うっかりメガネを踏んでしまって……。この通り、フレームが歪んでしまったんです」
そう言って、自分の顔にかけたメガネのふちを指さす。確かに歪んでいた。
「それは……なんというか……」
「はは、笑ってくださって結構ですよ」
「…………」
「不躾にいろいろと尋ねてしまって申し訳ない。では、僕はこれで……」
本当にここで出会ったのは偶然だったのだろう。なんということもなく雑談を切り上げ、沖矢が踵を返しかけた矢先。
鋭い悲鳴が響いた。
「……!」
「なっ……」
早かった。沖矢はその足をメガネ屋の奥、悲鳴の聞こえた扉の方へ向けて、誰よりも先に乗り込んで行く。待て待て待てそこバックヤードじゃ……。と思ったが、思わず後を追って扉の向こうを覗いてみると、視力を測るための検眼室であるようだった。
その検眼室の床に人が倒れている。おそらくはこの店の店員、制服は女性のものだ。
「……すみませんが、救急車と警察を」
「あ……はい……」
沖矢にそう言われてスマホを取り出したものの、SIMカードが無効なのを忘れていた。仕方なくちょうどそばにいた店員に話しかけて電話を借りる。
その場にいる誰もがひどく狼狽えていた。
私だって狼狽えたいよ。なんだよこの事件遭遇率。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時