Ep.33 落ち着いた声 ページ33
元の世界に戻れない。
ということは、当分はここで暮らしていかなければならない。
起きてしまったことは仕方ないし、いつかは帰るつもりだけど……本格的に、現実的な生き方を模索する必要が出てくる。
例えば自分で働いて生きていくなら、お金の無駄遣いは致命的だ。それが無駄であるかどうか、出費として割り切れる程のものであるかどうかを慎重に考えなくてはならない。それが高価な買い物であればあるほど。
「……高いな……」
綺麗に整列したメガネの群れを眺めながら、誰にも────特にメガネ屋の店員には聞こえないよう呟く。
ここはデパート内のメガネ専門店。子供用から老眼鏡までありとあらゆるデザイン、効果のものが揃っているのは良いのだが、いかんせん高校生の感覚ではなかなか手が出しづらい価格帯である。
やはり通販で探した方がいいのだろうか？ 大まかな度数は覚えているし、安かろう悪かろうでも今は安い方がいい。
そもそも、いつまでも暮らしていけるだけの手持ちはない。働き口を探さなくては。それに、ああ、灰原さんやコナンとのことも考えておかないと。またどこぞで遭遇しないとも限らないんだから。
「(……結局、電車の視線はなんだったんだろう)」
どん、と肩に衝撃が走る。
考え事をしていて前も見ていなかったらしい。昨日から人にぶつかってばかりだ。頭を下げながら他の棚に移ろうとした。
「すみま……せ……」
………………。
なんだ？ もう、こういう「お決まり」なのか？ 私が事件の流れをそう評したように？
「いえ、お気になさらず。僕も不注意でした」
妙に落ち着いた男性の声がそう言う。
初めに視界に納まったのは首から下だった。肩幅のある背の高い男。ぐっと目線を上げて相手の顔を見る。
なんでここにいるんだ────沖矢昴。
「…………」
「もしかすると、あなたにとっては踏み込まれたくないことなのかもしれませんが……」
「……はい」
「学校はどうされたのでしょう？」
「……サボり、ですかね」
「そうですか。失礼しました」
そういう割に微塵も引け目など感じさせない態度で糸目の男が微笑を浮かべる。
彼は沖矢昴。東都大学の大学院生で、訳あって工藤新一の実家に一人で住んでいる。
その正体は死んだハズの人間なのだが、それには更に訳があって、今は大女優直伝の変装術と天才博士の変声期で別人に成りすます難儀な男である。
もちろん、彼も「名探偵コナン」のキャラクターだ。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から！ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…！✨ またよろしくお願いします！ (2021年11月2日 15時) (
レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます！ 応援してます！ (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます！ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます！お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2021年9月7日 21時
