Ep.31 やるべきこと ページ31
────ホテルの部屋で目が覚めた。
いつもと違う天井、デジタル時計の表示を見て、ああ、戻ってないんだなと理解する。時刻は五時四十分。
「……現実か……」
いろいろあったな、昨日は。
学校サボって乗った電車で米花駅に着いて定期を落とし、少年探偵団に出会い、事件が起きて解決して……しまいには定期をコナンに渡したまま逃げるという。今思えば何をやってるんだ、というか何をしたかったんだ、私。そもそも何が起きてるんだコレ。未だになんにも分からないんだけど。
癖で枕元を探るが、そういえばここはホテルのベッドだしメガネは家に置きっぱなしだ、と気が付く。
そうだ。今日、メガネ買いに行こう。コンタクトレンズだけじゃ、寝起きや寝る前に不便だ。
目下のやるべき事が見つかってようやく私は布団を剥いだ。もそもそと足をおろし、スリッパをつっかけて洗面所へ向かう。
顔を洗って鏡を覗き込み、自分の顔と向き合う。
やらなくてはならない事だらけだ。
いつ帰れるか分からない。だからこそ、打てる手は堅実に打つ。
大丈夫。最悪、警察に駆け込んで行政に保護してもらう。元の世界に帰るため、私にやれることをやるだけ。
まずは────……。
「……東都環状線、か」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
頭上のスピーカーから響く案内音声。背後で地を鳴らす轟音。
スマホをいじる人々、その背中は様々で、時折見覚えのある青い制服があった。
通勤、通学ラッシュの時間帯だ。駅のホームはこれでもかと言うほど混みあっていて、制服姿の私はごく自然に溶け込んでいるように思えた。
わざわざこの時間帯に、米花駅にいる理由。それはもちろん異世界に来たときと同じ方法を試すためだ。
私は昨日の朝、山手線の外回りに乗って、東都環状線の同じく外回りの電車を降りた。
ならば元の世界へ帰るために私が乗るべき電車は、同時刻に発車する東都環状線の内回りである。
おそらく私は、同じ車両に乗る人々の中で最も緊張していたことだろう。
これで帰れたらいい。帰れなかったら、それはそれで仕方ない。だがもし、もしも、どことも知れない異世界に到着してしまったら？
以前読んだネット発の都市伝説、「きさらぎ駅」などを思い出して薄ら寒い感覚を覚えた。
どうか、そうはなりませんように。
ホームへ滑り込んできた電車に、人の流れに逆らわず乗車する。普段は信じてもいない神に祈った。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から！ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…！✨ またよろしくお願いします！ (2021年11月2日 15時) (
レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます！ 応援してます！ (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます！ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます！お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります！ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほろにがクラゲ
| 作成日時：2021年9月7日 21時
