Ep.19 二度と探偵なんて ページ19
全てのパトカーがその場から引き上げて、私は肺に溜まっていた息をようやく吐き出すことができた。
疲れた。本当に疲れた。
借り物の推理を披露しながら、私は何をやってるんだと思ったのは一回や二回じゃなかった。肩身の狭い場違い感をせめて表に出すまいとしたのは、私なりに、「探偵」への憧れが少なからずあったからだ。
だが今日ので分かった。私は二度と推理なんてやらなくていい。向いてないのだ、そもそも。
人前で話すとか、注目してもらうとか……自分の言葉に絶対の自信なんて持てないから、自分しか気付いてない仮説を自信満々に話して聞かせる行為の、なんと落ち着かないこと。
なにはともあれ無事終わったことにほっとして、花壇の縁に腰を下ろした私に足音が近付いた。顔を上げる。探偵団の子供たちが……嬉々とした純粋な眼差しで私を見ていた。
「あ……みんな────」
「すっげーじゃねえか、姉ちゃん!」
大きな声に肩が跳ねた。ずっと静かで張り詰めた空間にいたせいで、感覚が若干過敏になっていたかもしれない。
なんというか……子供って元気だなあ。
……この状況で元気なのもどうかと思うけど。
元太がそう詰め寄るのを皮切りに、歩美と光彦も興奮した様子でさらに近寄ってくる。う、これ以上後ろに傾いたら花壇に落ちる。
「あの鮮やかな推理……僕、感動しました!」
「すーっごくかっこよかったよ! お姉さん、名探偵だね!」
「あ、うん……ありがとう……」
助けを求めてコナンを探す。いた。いたが、灰原さんと何か話しているようでこちらを一ミリも見ていない。
知り合いには子供がいないし、子供の扱いが上手いとも思わない。私にはどうしようもなかった。子供たちが納得するか、保護者二名が止めに入ってくれるまで、なんとか相手をするしかない。
「いつから犯人が分かってたんですか!?」
「……いつからだったかな……」
「どうしてあの万年筆が怪しいって思ったの!?」
「なんとなく……」
「じゃ、犯人のどこが怪しかったんだ!?」
「あー、えーっと……」
どこがと言えば、どこだろう。
容疑者として三人が集められたとき、その時点で越智という男だけが浮いていた。
自転車操業も危うそうな看板の錆びた零細企業に、キッチリとスーツを着た好青年が勤めていたこと。初めは三人とも容疑をかけられたことに対し文句を言っていたが、ある瞬間から、越智だけが捜査に協力的な姿勢を見せ始めたこと。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時