Ep.11 容疑者体験VR ページ11
「えーそれでは……あなた方のお名前をそれぞれ聞かせていただけますかな?」
四台目のパトカーから現れた、恰幅のいい中年男性。帽子をかぶったその姿には、それまでの制服警官や鑑識員とは違い、明らかな見覚えがあった。警視庁捜査一課の目暮警部だ。
と思うと、同じ車から降りてきた男女は佐藤刑事と高木刑事だった。もう四方八方を漫画のキャラクターに囲まれていることになる。こうなってくると容疑者体験VRだな。
私は右側に立つ三人に目をやった。彼らは容疑者だ。この建物の中にいた三人。もっと言うとあの五階にいた、被害者の知り合いである。
だがそもそもの疑問があった。私がそれを口にするより早く、三人のうち一人が目暮警部へ食い下がる。
「おい待てよ! なんだってオレたちが話なんて聞かれなくちゃならねえんだ!? こんなん事故か何かだろ!」
「ま、まあまあ、落ち着いてください……」
その様子に残りの二人が顔を見合せた。
「彼の言う通りだ、刑事さん……。確かに亡くなったのは我々の同僚だが、まさか突き落として殺したわけじゃあるまいし……」
「共謀して社長を殺したって言うんだったら、それこそお門違いです! 僕達は雇われの身で、社長には感謝こそすれなんの恨みもないんですから……」
発言した順に、ワイシャツの襟がよれた被害者と同じくらいの歳の男性、真面目そうに前髪を分けたこの中では最も若い男性。
私は何も言わずぼんやりと聞いていた。
あまり興味がない。どうせこの人たち、胸の下あたりに不透明度50%くらいの青テロップで名前表示されるタイプだ。その上で予言するけどたぶん次回以降二度と登場しない。そんな顔してるもん。
っていうか今日、カバンが重いな……。何入れてたっけ。
あ、そうだ。美術の授業で使って、間違ってカバンに入れた彫刻刀一式。やばいなー、これ朝イチ返さないとバレるぞ。あっもう手遅れだ。
腕時計を見るととっくに授業が始まっている頃だった。そういえば、あっちは平日だったけど、こっちは休日なんだな。日曜日って言ってたし、現に蘭やコナンたちは学校に行く格好をしていない。
どうするかなって思ってたけど、少なくとも今日学校に行かなくて済むってのは少し気分がいい。これはサボりではなく、不可抗力なのである。
「……それで、君は?」
……。
誰も返事をしないなあと思って、周りを見て、ハッと我に返る。目暮警部も、他の関係者も、こぞって私を見ていた。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - カミレさん» 以前から!ありがとうございます🙏😊✨自分が好きなものをずっと書いてますが、喜んでくれる方がいると思うととっても嬉しいです…!✨ またよろしくお願いします! (2021年11月2日 15時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 以前からほろにがクラゲさんの作品が大好きです。久しぶりに占ツクに来てみたら、新しい作品があってとっても嬉しいです。お話の構成とスピード感、尊敬してます。今回も面白いお話をありがとうございます! 応援してます! (2021年10月29日 14時) (レス) @page14 id: 6ee71cea05 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ふれあさん» コメントありがとうございます!ホントですか…嬉しいです…🥺更新頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - 鈴凛さん» コメントありがとうございます!お好きと言っていただけると自信になります…✨✨ (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - snowcatさん» コメントありがとうございます❗あっという間…好み…とっても嬉しいです…😊✨これからも頑張ります! (2021年10月24日 17時) (レス) id: 353f334da7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2021年9月7日 21時