メタ推理で犯人当てたらJK探偵とか呼ばれだした【名探偵コナン】

Ep.02 米花駅 ページ2

────……ぎは、……駅……────

遠くに車内放送が聞こえる。ごとり、ごとり。列車は規則正しく揺れている。

私は目を覚ました。ピントの合わない視界に、乗客のまばらな座席が映る。

「(……もしかして、しばらく寝てた？)」

さっきまでほとんど人がいなかったはずだった。

コンタクトが乾いて、目に強烈な違和感があった。学生カバンから目薬を取り出して両目にさしていると、再び放送が流れる。

「次はー、米花駅……この電車は東都環状線、東京・下野方面行きの……」

……ベイカ駅？ 東京……は分かるけど、下野ってどこ？

っていうか東都環状線？ 山手線じゃないの？ ココどこ？

山手線が山手線以外に直通運行するなんてありえない。でも私は今の今まで眠っていた。

………………なんで？

目線を上げてドア上の液晶を眺める。

米花、杯戸、下田馬場、東沢袋、沢袋……。

血の気が引いた。全部知らない。知らない駅だ。

全く知らないわけではなく、既視感を覚えるあたりがさらに不気味だ。下田馬場、沢袋……それに杯戸や米花なんて、まるで────

「……────え？」

声が出た。車両内の何人かが、こちらを横目に見やった。

でもそれどころではない。

米花？ 米花なら私は知ってる。米花町は、「名探偵コナン」に出てくる架空の土地だ。

……待って。それなら杯戸もそうだ。杯戸町。米花町の隣町。

それに……東都環状線だって、米花駅に通る架空の路線のハズ。

「名探偵コナン」というのは、読んで字のごとく探偵ものの漫画である。長期連載で人気は磐石、アニメ化も映画化も恒例とまでなった、知らないものはいない超大手ジャンル。

かくいう私も知らないどころか、平均的に見ればたぶんなかなかのファンだ。数十の単位で数える単行本を最新刊まで買い揃え、毎年の劇場版を欠かさず観に行く程度には。

電車が停止し、ホームドアが開いた瞬間、私は外へ飛び出した。

見覚えのない駅構内を走る。何度も人にぶつかりながら、どこへ行くべきかも分からないけれど、ただその衝動を抑えられず走った。

改札を潜ろうとして気が付く。通れるんだろうか、これ。

案の定、自動改札機がエラーを吐き出した。息を切らせながら、後ずさりをして改札横の窓口へ向かう。

「あの……ここって米花駅……ですよね？」

エラー処理のついでに駅職員へ尋ねる。帰ってくるのは、当たり前みたいな一言だった。

「ええ。米花駅ですよ」

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