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……そのとき、気配があった。
背後に立つ、音も無い影。それが警備や警察ではないことは分かっていた。偶然で現れた人間が持っている空気感とはまるで違う、言うなれば"同類"。そう、夜の静けさを破らないように降り立つ幻影のような足音。
「それがあなたの素顔?」
聞き馴染んだ日本語でそう言った。冬の空気のような凛として透き通った声は、北風に吹かれながらそっと咲き誇る花を連想させる。
怪盗キッドは背中越しに笑った。
「これはこれは、ヴィオラ嬢……私がここにいるとよくお分かりで」
「怪盗キッドがあの場から消える直前まで、キミはその場にいなかった。なのにキミの肩には、ワタシが撒いた煙玉の粉が付いていた。よってキミが怪盗キッドだ」
確かに、キッドの上着には微量だが細かな粉塵が付着していた。あの粉煙はその為の罠だったのか。
「しかし、あの場にいた人間なら粉を被っていたこと自体はおかしくないはず」
「今言ったじゃないか。キミのような人間はあの場にいなかったからだ」
中性的な口調が当然のようにそう言う。どういうことだ。だってそれなら、つまり……
「まさか……記憶してたのか? あの場にいた人間全員分の顔と格好を……」
振り返ってその姿を捉える。彼女は東京やニューヨークのどこにでもいるようなクール系のコーデを自然に着こなし、トレンチコートの両ポケットに手を入れて佇んでいた。キャスケットの奥に隠された瞳が輝いて、細められた。
「退場規制の身体検査があるから、まっすぐ外には出ないだろうと思った。すんなり屋上に入れちゃうあたり、さすがだけど」
「なるほどな……それで、人並みに逆らって進む奴を探したってワケか」
「さて……」
彼女は右手をポケットから出し、前に差し出した。
「その宝石───────……悪いけど、譲ってくれる?」
月光を背負ったキッドは不敵に笑んで告げる。
「そいつは無理な相談だな、お嬢さん」
一触即発。張り詰めた空気が今にもはち切れんばかりに震える。
「……と言いたい所だが、オレは別に構わないぜ?」
「え?」
「目当ての宝石じゃなかったんでね。持ち主には返さなきゃなんないが……どうやら怪盗ヴィオラってのも、ご丁寧に宝石を元の場所に戻すらしいじゃねぇか」
放り投げられた石を片手でキャッチして受け取る。
「……どうかな。
僅かに笑って残った左手をポケットから出した。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» こちらこそ続編までありがとうございます!読んでくれる皆様のおかげです……!一生じゃなくていいのでまた着いてきてくださると嬉しいです(笑) (2019年9月28日 14時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 本当に過去編を書いてくれるなんて、、、!ありがとうございます!!一生ついて行きます!笑 これからも更新頑張って下さい! (2019年9月25日 20時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月25日 18時