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園子はその愉しそうな顔を見て、犯人たちを警戒し小声で「ちょっと……」と姉を制止する。しかし聞く耳は持たなかった。
「泥棒さんがテロリスト気取ってずいぶんご機嫌みたいだったけど、そうなってみるとオモチャを取り上げられた子供ね」
「なッ、ナメた口を……!」
「仲間割れは結構だけど、あなた達に宝石は渡さないわよ。ちゃんとおじさまに返してもらうんだから!」
「……へえ、大人しい人だと思ってたけど割と気が強いのね、嫌いじゃないわ」
「ありがと。でもあなたには負けるわ」
スパイの西谷が余裕綽々に見下ろすのを、Aは不敵に微笑んで視線を返す。
「それに……さっき仕掛けてたあの爆弾だけど、起爆するアテはあるの?」
「はァ? 何言ってんだ、起爆装置なら」
「そうじゃなくて……」
犯人の言葉を遮って、肩越しに後ろへ視線を動かす。他の大人のように両手を拘束された探偵団や灰原哀もじっとこちらを見つめていた。
灰原は、ハラハラと落ち着かない歩美たちとは対照的に眉ひとつ動かさず静かな目をしている。
今日見ていてわかった事だが、あの子もただの大人しい子供というわけではなさそうだった。異様に豊富な知識、回転の速い頭脳、正確な判断力。どちらかと言えば、江戸川コナンと同類。
そして彼女もきっと、あの名探偵を信頼しているのだろう。
「改めて教えてあげるけど、武装した犯罪者たちを制圧したのは私じゃなくてコナンくんよ。 なにを根拠に悠長にかまえてるの?」
挑発をかけながら、手元にカードナイフを忍ばせる。一瞬の隙があればいつでも縄を抜けられる。Aの僅かな挙動に真っ先に気がついたのはすぐ隣にいた園子だった。手の中に何か隠しているのを見つけ、薄ら笑みを浮かべる顔を見上げる。
何をしようとしているのかは分からない。けれど、Aは何かをしようとしている。ほんの少し躊躇っても、その結果を信じることができた。
「そ……、そーよ! あのガキンチョなめてると痛い目見るわよ!」
「え? ち、ちょっと園子!」
「蘭だって知ってるじゃない! よく新一くんと連絡とってガキンチョが全部解決しちゃったりするでしょ?」
「そうね……江戸川くんはすばしっこいから、今頃ボスの人も倒しちゃってるかもしれないわね」
「は、灰原さんまで……」
「う、うるせえ! 黙っとけ!」
石本は声を張り上げるが、動揺しているのは目に見えて明らかだった。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時