Ep.8 天空の難破船 ページ34
「これは…………」
医務室のカーテンを開け放つと、二つならんだ白いベッドの片方には両手首を細い縄で縛られ猿ぐつわを噛まされたポニーテールのウェイトレスが、もう片方のベッドは空だった。
「……あ、あの! 今、男の子とすれ違わなかった?」
駆け寄って猿ぐつわを外すと、ウエイトレスは慌ててAに詰め寄る。少し面食らったあと、彼女の手首の麻縄を解きながら「眼鏡の男の子?」と問い返す。
「ええ……あの子、そこにいた男性を追っていったみたいで……」
「藤岡さんよね? 彼はどこに?」
「あの人も犯人の一味なの! 私を拘束してどこかに向かったわ……きっと細菌感染なんてウソだったのよ!」
縄がするりとほどけ、ようやく両手が自由になる。Aは愕然とした。───────だとしたら、あの窃盗グループは主犯じゃない!
「奴らは雇われ兵……ただの実行犯ってこと……? なら、全ての計画を企てたのも……」
そうだ、だから彼は血相を変えて飛び出したのだ。主犯が窃盗グループのリーダーではなく、藤岡だと気が付いたから。
(……なぜ今更動き出したの? 考えられる理由は、仲間を置いて逃走するためだけれど……)
空のベッドをしばし見つめ、やがて小さく首を振った。それを阻止するためにあの子が行ったんじゃないか。ともかく、私のすべきことは他にある。
「……ここを出ましょう。細菌は偽物だったの。あなたもその炎症をどうにかしないとね」
事件がひとまずの収束を見せたことで、船内は少しずつ息を吹き返していた。相変わらず通路は閑散としているが、やはり空気が変わったように見える。
しかし未だ嫌な予感を捨てきれないAは拘束されていたウェイトレスとともに早足にダイニングへと向かった。
「毛利さん! 中森警部!」
フロアに飛び込むなり、まずこのことを伝えておくべきであろう二人を大声で呼ぶ。
「おや。どうしました、そんなに慌てて……」
「奴らの仲間はまだいました! ルポライターの藤岡さんが真っ先に感染者を装って、場の不安を煽ると同時に障害となる毛利さんや蘭ちゃんを───────……」
ドン!
デッキに響いた爆裂音は、すぐに静寂をもたらした。音の方に視線が集中する。
「え……?」
その人物は、重厚に黒光りする拳銃を手にしていた。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時