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黒服のSPを数人連れた鈴木財閥の相談役、鈴木次郎吉が不機嫌そうに足を踏み入れる。
「フン、おかげでワシの自伝映画用のヘリも飛行許可が降りんかったわ……」
「次郎吉おじさま!」
愛犬ルパンがその足下に寄り添い、次郎吉の言葉にひと吠え返事をする。次郎吉の登場に気がついた水川たちが、愛想を浮かべて歩み寄ってきた。
「どーもどーも、鈴木相談役! 本日はよろしくお願いします!」
しかし次郎吉は飛行船を褒められても、スタッフの少なさに憤りを覚えている様子だった。聞けばやはりテレビ局も、『赤いシャム猫』の件で大忙しのようだ。
石本と西谷も「あの細菌って飛沫感染するんだろ?」「怖いわよね……」とどこか他人事のように囁き合っている。テレビ局の人間でさえそうなのだから、ほとんどの日本国民は結局他人事だと思っているのだろう。
「なぁに、殺人バクテリアだかなんだか知らねえが……オレなんか、病原菌がウヨウヨしてる所を飛び回って来たが、この通りピンピンしてるぜ! 人間様は細菌より強ぇんだ」
そう会話に割り込んできたのはルポライターの藤岡。不安がっていた子供たちはその言葉にほっときた様子を見せたが、藤岡は意地悪くこう続けた。
「もっとも、お前らみたいなガキはコロッといっちまうだろうがな」
「えぇ〜!?」
「やめてください、子供たちを怖がらせるようなことを言うのは……」
「そうよ、無神経すぎるわ!」
蘭と園子に責め立てられるも、高笑いを残して藤岡はフロアを去っていった。なんとなく良くない雰囲気が流れ出しかけた頃、次郎吉が自信ありげに言う。
「なぁに……例え日本のどこで細菌がばらまかれようが、この飛行船に乗っている限り安全じゃ! 安心せい!」
「……大阪に着陸するじゃない、この飛行船」
「ま……まあ、それはそれじゃ……」
Aの苦笑混じりのツッコミに意気を削がれつつも、すぐに調子を戻して「では、ワシはまだやることがあるんでな!」と黒服と共に通路に消えていった。
「……殺人バクテリアね……」
「そういえばあなた方は、鈴木相談役の姪御さんでは……?」
水川が園子とAを交互に見て控えめに声をかける。途端、Aはさりげなく居住まいを正して穏やかな表情を作った。
「ああ、お初にお目にかかります。鈴木Aと申します。未熟者ですが本日は両親に代わりまして皆様にご挨拶申し上げたいと思い、ベル・ツリー1世号の遊覧飛行にお供させていただきます」
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時