Ep.5 怪盗たち ページ22
「ココに残ってよかったのかよ?」
「新しい爆弾は見たとこ二つだし……燃料タンク裏に密集してたから、あの探偵くんなら人手は十分じゃないの」
向かって反対側の排気口の前に腰を下ろし、手持ち無沙汰に単眼鏡で街を眺める。
「そうじゃねーよ、今ここに残るってことは"怪盗キッド"と二人っきりで同じ空間にいるってことだ。あの名探偵なら疑われかねないぜ」
「証拠がない。動機もね。誰も知らない」
「……そりゃ、話に聞いただけの宝石を見つけるために家族を裏切って怪盗キッドの共犯者なんて、誰も考えないだろーけどな」
「あら、裏切ったつもりはないよ。おじさまとのキッドの戦いは園子もキッド派だし」
「大犯罪者だと知られても?」
「……そうね……みんな悲しむだろうね。だから捕まらないように頑張ってよ、怪盗キッド」
共犯者とは一蓮托生。たとえ運命を共にする気はなくとも、同じ道を歩む者同士。その理由はたったひとつ、互いに利があるから。
「そいつはこっちのセリフだぜ、米国の女怪盗」
キッドがそう口にした途端、どことなく空気が張り詰めた。気兼ねのない軽口を叩きあっていたのとは一転して、少し触れれば崩れそうな不調和が流れ出す。その均衡を保ちながらAはひとこと言葉を発した。
「善処するわ」
彼女、Aには「もう一つの名前」がある。言うなれば"鈴木A"の裏の、また更に裏の顔。誰にも打ち明けることのない闇の顔。
それが「怪盗キッド」の共犯者たる
親指の指輪が、今度は目が覚めるような空の青色を鮮やかに写し出す。小指の先程もない小さな石はときに夕焼けの魅入られるような茜色を、よく顔を近づけて見ればバイオレットの瞳の色を写すこともあった。
眩しい西日はやがて地平線際の建物に向かって落ちて行く。低くなるにつれて赤みを増して、そのうちオレンジ色のベールを空全体に覆いかけた。
「ところで……このテロ事件はどう思う?」
「さーな。こういうのは怪盗じゃなく探偵の領分だし……」
「……そう……」
顎に指を添え、思考の渦に没頭する。実験所の爆破から飛行船ジャック、今までの出来事を頭の中で順繰りに想起してゆく。『赤いシャム猫』のネット予告、殺人バクテリアによるバイオテロ、飛行船の経路───────
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時