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「なんだ、コナンくんのことかと思った」
そのとき、キッドがさり気なく見張り続けていた階上の方で物音がした。Aは素早く静かにその視線を辿り階段の上を観察する。蘭がまだそこにいた。
「……何?」
「さっきすれ違った藤岡って奴がちょっかい出してただけだよ」
「……セクハラ?」
「……訴えられなくもねーな」
「これだから男ってやつは……」
そう呟いて階段を上って行く。キッドは黙ってその背を見送ってから、従業員用通路に歩を進めた。
あの江戸川コナンという少年の正体が高校生探偵の工藤新一だということは、Aにはまだ話したことがない。それは彼なりの線引きなのかもしれなかった。
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その後は、フロアに集まってティータイムが開かれた。景色の見える窓を横目に、各々が高級レストラン張りのサービスと食事を楽しむ。小五郎はビールをあおり、体調は万全に復活したようだった。
「……」
食器を下げてもらう合間に、Aは隣のテーブルの蘭を見やった。ちょうどデザートのケーキを配膳しにやってきたキッド扮するウェイターをじっと見て、園子の言葉にも耳を貸さないでいる。
(……ホントに大丈夫なんだろうか)
「……ですから、このドアを開ければ……」
ふと、人目を偲ぶ囁き声が耳についた。Aと同じテーブルには元太、光彦、歩美、そして阿笠が座っていて、三人の子どもたちは顔を寄せあって何か作戦会議をしている様子だった。
「それで前のドアから出れば……」
「行けるんだな!」
「どこに?」
「えっ?」
ぐいと顔を近づけて手元を覗き込むと、それはどこから入手したのか飛行船内の見取り図だった。なるほど、と察しをつける。
「へぇー、飛行船を探検しに行くの?」
「い、いや、ぼ、ボクたち別にそんな!」
「へ、部屋でトランプしようぜって話してたんだよ!」
「いいじゃない、探検。ねえ、私もこっそり混ぜてくれない?」
「え? いいんですか?」
「こっそりね。私、こういう所大好きなの。それに、大人がいた方がいいこともあるでしょ?」
人差し指を唇にあててそう言うと、子どもたちは頷きあって「じゃあ早くケーキ食べて行こうぜ!」と小声で沸いた。
(私も内部を見ておけた方が、いざってときに動きやすいしね……)
フォークを刺してブラックベリーのケーキを頬張る。ウェイターの一人と目が合って、言葉を交わすようにゆっくりとまばたきをして見せた。
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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時