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(ら……、蘭ちゃん? 一人で……?)

土台の影から様子を見守る。蘭はエレベーターを降りてゆっくりと舞台へと近づいてきた。

月夜に佇む怪盗キッドに歩み寄ると、八の字に眉根を寄せて「ねえ、新一……」と弱々しく声をかける。

蘭に背を向けたキッドが「やべっ……」とでも言うように表情を変えたのがAには見えた。まさか、工藤新一の顔を借りたこと……忘れたんではないだろうな。

声色を変えてキッドが言葉を返す。

「よぉ蘭。今日はなかなか刺激的な一日だったな」

「……新一!」

蘭が駆け寄って、白いスーツに包まれた肩を掴む。

「自首して、新一……やっぱり泥棒は泥棒、良くないよ……!」

(……蘭ちゃんってホントにいい子なのね……とんでもなく良識がある〜……)

「お願い、新一……!」

台の影から他人事のように傍観するAの前で、なんと蘭はキッドの背中に手を回し抱きついて自首を訴えた。長く連れ添った幼なじみの犯罪行為、例えそれにどんな事情があろうと正しいと思う道を導く。それが蘭の悩んだ末の答えだった。

(う、うへえ……快斗クン大丈夫かな……。なんか固まってない……?)

「……わかった」

静かに、キッドがそう呟いた。え、とガラス越しにその顔を見るが、薄暗くてよくわからない。

「それじゃあ……!」

「オレが一番欲しかったものをオメーがくれたら、警察に出頭してやるよ……」

「え? でも私、何も……」

キッドはゆっくりと振り返り、当惑する蘭を優しい目で見詰める。しなやかな人差し指を蘭の唇にそっと当てた。

Aはだんだん見てはいけないものを見ているような気になって、台を背にずるずると座り込む。犯人たちから隠れている時より必死に息をひそめて気配を消した。

「それはもちろん……」

「え!? あ、ちょ、ちょっと……」

(あー! 待って待って待って! 私なんも見てない! 見てないから!)

気まずすぎる、切実にやめてくれ怪盗キッド。二人の距離は少しずつ、だが確実に縮まって行く。月光に浮かぶ影。彼を工藤新一だと信じている蘭は抵抗しない。

見てはいけないと思いつつ台の影から覗いてしまうあたり、元来の野次馬根性を大いに発揮してしまっている。ああ、待って、蘭ちゃん。そいつは工藤新一じゃなくてただのド変態キザ野郎───────……

.→←Ep.9 指輪



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ほろにがクラゲ(プロフ) - 美桜琉さん» ありがとうございます!完結しました!よかったです、今回は特に私の自己満だったので、楽しんでくれてる人いるかなー?って心配で…ホントですか!過去編!か、書いてみようかな?? (2019年9月22日 21時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - 完結おめでとうこざいます!ほんっとに最高でした!!過去編マジで見たいです…! (2019年9月22日 21時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - パシェロさん» ひゃあありがとうございますー!できるだけ映画に沿えるように…物語に夢主が埋もれるかもしれないんですが…(;´Д`)今後も頑張ります! (2019年9月7日 9時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)
パシェロ(プロフ) - にゃんーーー!!((^ω^ΞΞΞ^ω^))これが見たかったー!!映画風の夢小説見たかったんやー! (2019年9月7日 8時) (レス) id: b9096b0156 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - バス停さん» 私必死に金ローしてました() 大丈夫ですかちゃんと画面観れました? (2019年9月6日 23時) (レス) id: ad5934c8e1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2019年9月5日 16時

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