Ep45.取引と殲滅の記憶 ページ45
もし、この世界が「名探偵コナン」のものではなく、私が主人公だったなら……――――
ぼんやり、考えた。もしもそうだったなら、その物語はいったいどういう終わりを迎えるのだろう。
私が死ぬまで? 何か大きな事件が発生して一区切りするまで? はたまた私が組織を裏切り敵対する側に着くまで?
ガラクタの詰められた箱の山の頂上から、埃だらけの倉庫の内装を眺め、ファンタジーな馬鹿げた思考に苦笑いした。そんなもの、決まっている。そんな物語あるわけがないだろう。始まりがないのだから、同時に終わりも無い。
それに……
(わかってる。この世界でこのまま生きていたら、ハッピーエンドなんて有り得ない。この世界は所詮彼のものだ)
でも。それでも。
私はこの記憶を利用して勝ちとるものに興味なんてない。これっぽっちもない。
「考え事してるところ申し訳ないんですが、定刻まで二分切りましたよ」
壁に凭れ掛かりキャップを深く被ったバーボンが淡々と告げる。腕時計をちらりと見やると、とあるクライアントとの取引時刻が間近に迫っていた。
まあ取引とは名ばかりで、実際これは戦争を吹っ掛ける口実作りの罠に過ぎない。
相手は少数で構成された小さな密売屋だが、ボスの用心深さと計画の緻密さから裏社会でも頭角を現し始めている組織だ。私達にとっては、それが気に食わないというわけで。
「今回の『取引』相手はどうかしらね」
「そうですね。『取引』が成立するといいのですが」
「そうね……」
やがて倉庫の周囲に数人の気配が集まり、それとは別に正面のシャッターから近づく足音がわざとらしく聞こえだした。なるほど、囲まれたのだ。
「……残念。あちらもその気はなかったみたい」
「では……”予定通り”行きましょうか」
名目上『取引相手』となる二人組の男が倉庫に立ち入った瞬間、轟音を上げてシャッターが閉まる。
「なッ……!!」
「くそ、罠か!」
「人聞きが悪いですね。お互い様じゃありませんか」
「うふふ、気が合うのね。もう少し従順なら手を組んでもよかったのに」
高級なスーツを着た中背の男と、その部下らしき痩せた男。見たとおり、ボスと部下だろう。
「倉庫外の銃声が聞こえる?ここらに張った狙撃手があなたの部下の人数を減らしてる音よ。そしてボスがここで死ねば私たちの目的は概ね達成……」
「待ってください、ニコラシカ」
今にも引き金を引きかけた私をバーボンが制止する。
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もこ - 面白い (10月11日 17時) (レス) id: 67135257cc (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ののいろ系女子さん» ここで……終わってしまいました!<(・`-・`)>バーン ありがとうございます!そうですね、次はちゃんと(?)トリップものにしようかと考えています。よかったら次もよろしくお願いします! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ハルカさん» ありがとうございます!こんな打ち切りみたいな終わり方でいいんだろうか……と思っていたのですが、楽しんで頂けたなら良かったです! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - ここで!?でも、これはこれで結構良いわぁ!←何様 黒の組織エンド最高でした!次の作品は、トリップか転生物が見たいなぁって。てへ( ^∀^)← (2019年2月4日 19時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 黒の組織エンドめっちゃいいです!最後まで楽しませていただきました!完結おめでとうございます! (2019年2月1日 8時) (レス) id: f6af1829c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2018年7月28日 19時