記憶喪失はフリじゃないんですよ。【名探偵コナン】

Ep43.友達の記憶 ページ43

その後すぐ迎えを待ち、弾丸のように日本に戻る。

これが組織総出を上げて入手した最新鋭航空機だからいいが、一般の旅客機なら往復だけで一日半を費やす移動量だ。郊外でヘリに乗り変え、東都水族館近くのヘリポートに降りた頃には、日は落ちきり青と黒の溶け合う夜空が上にも下にも広がっていた。

キラキラと煌めく東都水族館のテーマパークを眼下に臨む。二輪観覧車と、噴水ショーの舞台が見える。

ヘリの風に乱れる髪を払うのも諦めて、地上に目を凝らした。


「こちらニコラシカ、到着したわ。え？どこって……東都のN.Dビルよ。ここらで使えるヘリポートここしかないじゃない。……ああ。公安の動き方くらい私が予測できない訳ないでしょ。地上から向かうわ」


通話機を耳から外し、月を見上げた。

今頃、水族館はどんな感じだろう。組織の動きから計算すると、キュラソーは既に観覧車に乗り込んだ可能性が高い。

そして観覧車はきっと今に崩壊を始める。





それを全て知っていて何もしない現状が、結局のところ私の答えなのだ。



前世の記憶があろうとなかろうと、私の道は何も変わらない。

もうあんな日を過ごすことはきっと二度とないのだろうけど、今はただ少し寂しいだけだ。

それが自分で考えて選んだ人生なら後悔はしない。どれほど間違っていると説かれようと、私はここにいることをやめない。やめようともしない。


例えそれが、私の大切なものを敵に回すことになるとしても。




「さよなら」


抜き出したSIMカードを手のひらから転げ落とし、軽く弾むのを左足で踏み潰した。

パキ、と僅かな感触に指先が冷え、息が詰まる。



じゃあね、バイバイ。私の友達。



願わくば二度と会えませんように。

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