Ep29.トリップの記憶 ページ29
ということは、やはりこのメールの送り主はベルモットあたりか。
電話帳も履歴も残っていなかったのは、私自身がその都度削除していたから。
そして……私は本当は、何年も前にこちらの世界へ来ていたのだと思う。それから何をしていたかは知らないが、黒の組織の一員として違法な仕事をこなしていた。
一週間前、突然記憶を失うまでは。
あとは記憶喪失になった原因だが……何だろう、もうこうなったら仕事上のストレス過多による心的外傷かな。労災降りろ。
「……それで、メールの呼び出しには応じるんですね?」
「あ、はい。行かなきゃ行かないで殺されそうなんで……」
すると安室さんは「困りましたね……」と意外な反応をした。
「僕としては、バーボンの素性を知る貴方を彼らの元へ向かわせたくありません」
「はあ、なるほど。……でも向かわないと私の身が危ないのでー……」
「ええそうですね、なのでこうしましょう。あなたを日本警察が匿います」
「拘置所にですか」
「我々公安の機密事項は守られ、その上で組織の構成員の身柄という大きな手掛かりを得る。一石二鳥の提案ですよ」
「いやそれ私が一鳥も得られてないんですよ。ストップ、ストップです。落ち着いて話し合いましょう公安のゴリラ」
「話し合う気あるのか」
「すみませんでした」
なんかもうものすごい圧をかけられ、精神的一般人の私は萎縮するしかない。確かに安室さんの言うことは最もだ。私が彼の立場なら全く同じようにすると思う。
だってそりゃあ記憶が無いとはいえ、私は仮にも犯罪組織の構成員。降谷零は日本警察の潜入捜査官。
どちらが正しいかなんて、誰に言われなくとも一目瞭然だ。
でも、私は私であって────あなたではない。
私なりの都合があり、意思がある。
背後の掌紋認証機に手を置いた瞬間、エントランスの自動扉が開いた。
「なッ……!」
開き始めの隙間に身体を滑り込ませ、それを感知した人感センサーが防犯機能を遺憾なく発揮し、すぐさま扉の閉鎖を開始する。
「……あ、はは。すみません…………でも、心配しないで」
私達の目の前で扉が閉まり切った。高層マンションの生体認証セキュリティは、即興で破れるような代物ではないはずだ。
身を翻し、私は敷地内の地下駐車場へ向かった。彼が外側から出口に回ってくる前に、ここを出なければならない。
「……道連れにはしませんから」
1722人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もこ - 面白い (10月11日 17時) (レス) id: 67135257cc (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ののいろ系女子さん» ここで……終わってしまいました!<(・`-・`)>バーン ありがとうございます!そうですね、次はちゃんと(?)トリップものにしようかと考えています。よかったら次もよろしくお願いします! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ハルカさん» ありがとうございます!こんな打ち切りみたいな終わり方でいいんだろうか……と思っていたのですが、楽しんで頂けたなら良かったです! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - ここで!?でも、これはこれで結構良いわぁ!←何様 黒の組織エンド最高でした!次の作品は、トリップか転生物が見たいなぁって。てへ( ^∀^)← (2019年2月4日 19時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 黒の組織エンドめっちゃいいです!最後まで楽しませていただきました!完結おめでとうございます! (2019年2月1日 8時) (レス) id: f6af1829c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2018年7月28日 19時