Ep17.疑う記憶 ページ17
二人は揃って数秒固まったかと思うと、顔を見合わせて何かアイコンタクトを交わしたように見えた。
私がその意味を理解しないまま、コナン君が先に口を開く。
「……ご、ごめんなさい……」
「なんで?」
「Aさんのスマホを見たかったんだ。何か記憶を取り戻す手掛かりが無いかと思って」
「……服部、ホント?」
黙ったまま頷く。
ああ、そうか。なるほど。
そういう事か。
「分かった。見ていいよ」
ふっと肩の力を抜いて、スマホを適当に放り投げた。突然態度を柔らかくした私と投げてよこされた端末に、服部達は目を白黒させている。
「そういう事ならお互い様だ。私が"嘘をついてる"んじゃないか、って思ったんだね。二人は」
「え、……うん……」
「見なよ。フリなんかじゃないから」
そう言うとそれを受け取った服部がスマホに視線を落とし、コナン君は後ろからそれを覗き込んだ。
ロックはかかってない。二人はしばらく中身を見ていたが、何かを発見した様子はなかった。
「スマホの中身を確認したいなら、私に直接聞けばいい。それをしなかったのは、記憶喪失のフリをしてる可能性を危惧したから?」
「……もうそこまでバレたんか」
「まあ。自分でもそう思ってるしね」
「自分でも?」
「うん。あなた達が私を猜疑し、知ろうとするようにね」
今はコナン君がいじっている携帯端末にちらりと視線をやりながら、少しでも分かりやすい言葉を選ぶ。
「私自身も……私を疑い、警戒し、誰よりも知ろうとしてるってこと。そもそも『信じる』って『疑う』ことから始まるもんだしねぇ」
「じゃあさ、Aさん。ひとつ訊いていい?」
「いくつでも」
「Aさんの、好きな色って何?」
今度は私が目を瞬かせた。
急に何を聞くのだろう、と思ったが、思い当たる節を見つけた。
私の服か。着替えの服は真っ黒で、スーツケースも黒。工藤新一にとって黒と言ったら、アレだよねぇ。
いやごめん、私普通に黒好きなだけだと思う。
そもそもつい一週間前まで異世界にいたんですよ私。
「スマホが青いから、青かな」
「……いつも服が黒いっていうのは?」
「着回しがしやすい、色が合わせやすい、収縮色で細く見える。ファッション面倒くさい」
「そっか……ありがとう」
「ううん。明日さ、ショッピングに行くんだって。一緒に行こうよ」
「……うん!」
どうやら納得してくれたらしく、今度はわざとらしくない笑顔を向けてくれた。
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もこ - 面白い (10月11日 17時) (レス) id: 67135257cc (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ののいろ系女子さん» ここで……終わってしまいました!<(・`-・`)>バーン ありがとうございます!そうですね、次はちゃんと(?)トリップものにしようかと考えています。よかったら次もよろしくお願いします! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ハルカさん» ありがとうございます!こんな打ち切りみたいな終わり方でいいんだろうか……と思っていたのですが、楽しんで頂けたなら良かったです! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - ここで!?でも、これはこれで結構良いわぁ!←何様 黒の組織エンド最高でした!次の作品は、トリップか転生物が見たいなぁって。てへ( ^∀^)← (2019年2月4日 19時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 黒の組織エンドめっちゃいいです!最後まで楽しませていただきました!完結おめでとうございます! (2019年2月1日 8時) (レス) id: f6af1829c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2018年7月28日 19時