Ep2.欠落した記憶 ページ2
「……あの、失礼ですが、もしや……」
諦め混じりに声をかけると、すぐさま相手の反応があった。
「なんやオレの事知っとるんか? せや、何を隠そうこのオレが────」
褐色肌の青年は、後ろ向きに被ったキャップを自慢げに被り直すと、胸を張ってこう言った。
「西の高校生探偵、服部平次や!」
…………あれぇ。
……うん、えっと、
あれ?????
(……いや、おかしいよな? え、これおかしいよな? 服部って、えっ、だってそもそもこれ……夢?)
いや、夢なのだ。そうに違いない。
こんなにおかしな事が立て続けに起きるのだから、夢でない方がどうかしている。
のに、夢だとはどうにも思えない。
ぐるぐると回り出す頭。同じところを何度も何度も周回しているような、そんな思考の後、不意に私の脳みそはひとつの言葉を弾き出した。
────私は誰だ?
覚えてる、じゃないか。私は。
好きだったアニメの事。目の前にいる少年のこと。学校で習った勉強。テレビで見た雑学。
なのに、どうして────
「姉ちゃん? どないした?」
私は、私は────私の────
「………私の、名前を……知ってますか?」
「え?」
「私の、名前……。私は……」
「お、おいアンタ、もしかして……」
思い出せない。
自分の事を、何ひとつ。
果たしてここは本当に、私の知ってる"物語の中の世界"だろうか? そうだと分かっているはずなのに、それさえも疑ってしまう。
「記憶、喪失……」
「みたい……ですね」
「……って『みたいですね』ちゃうわ!」
「あっすみません」
すぐに謝ってしまうのは私の癖なのだろうか。それとも日本人の性か。
素晴らしいツッコミを頂いたところで、もう一度考えてみる。なるほど、確かにこれは記憶喪失だ。
自分の名前、顔、年齢、家族や友人の存在、その他にも諸々あるのだろうが、何分思い出せない。
対して、この世界────架空の物語「名探偵コナン」を悉知している事から、忘れているのはおよそ周辺の"人物"に関することのみなのかもしれない。日常的な知識、常識にひとまず欠落は見られない。
「なんやマイペースなやっちゃなぁ……。ほんなら警察に────」
────警察
ざわりと、胸が騒いだ。
何故だ。
「……警察はダメ」
ああそうだ。記録が無いからだ。
これが俗に言うトリップならば、この世界に私の記録はきっと無い。
だから、警察はダメなんだ。
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もこ - 面白い (10月11日 17時) (レス) id: 67135257cc (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ののいろ系女子さん» ここで……終わってしまいました!<(・`-・`)>バーン ありがとうございます!そうですね、次はちゃんと(?)トリップものにしようかと考えています。よかったら次もよろしくお願いします! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - ハルカさん» ありがとうございます!こんな打ち切りみたいな終わり方でいいんだろうか……と思っていたのですが、楽しんで頂けたなら良かったです! (2019年2月6日 19時) (レス) id: 41e8a6fa74 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - ここで!?でも、これはこれで結構良いわぁ!←何様 黒の組織エンド最高でした!次の作品は、トリップか転生物が見たいなぁって。てへ( ^∀^)← (2019年2月4日 19時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 黒の組織エンドめっちゃいいです!最後まで楽しませていただきました!完結おめでとうございます! (2019年2月1日 8時) (レス) id: f6af1829c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2018年7月28日 19時