Ep.48 人には言えない ページ48
「え……」
「何か、暗い顔をしていたから……」
そ、そんな分かりやすかったか……。
それとも彼女が鋭いのかもしれない。人の表情をよく見てるな。
「ううん、なんでもないよ」
「そう……ならいいけど、博士。私、彼女とお話してみてもいい?」
「あ、ああ、構わんが………」
ん?
なんだこの流れ?
首をかしげていると、博士は研究室のようなところに引っ込んでしまい、左隣に哀ちゃんが座る。
どういうことなのか、ぽかんとして2秒ほど間が空く。見知らぬ人間にこの子から関わりに来るなんて珍しい。
「……どうかした?」
「私、灰原哀。あなたは?」
「えっと、桔梗A……。中学二年生」
「そう、桔梗さんね」
こちらを見上げて髪を耳にかける彼女と、なんとなくじっと目が合う。
ミステリアスな瞳がとても綺麗で、この子は新一くんと違って振り切った飾り方をしない子だったなと思う。それにあそこまで開き直れる奴の方が私は恐ろしい。
「それで桔梗さん。何か悩みがあるんじゃない?
例えば、人には言えないような……」
「え?……なんで?」
「なんとなく。私は探偵じゃないから、わざわざ証拠なんて捜さないしね」
「………そっか。確かに、誰にも言えないなぁ……」
「なら、私が聞くわ」
「え?」
素で驚きの声を発し、哀ちゃんを見返す。
いや……今言ったよね??誰にも言えないって言わなかったっけ??
困惑していると哀ちゃんが静かにソファーを降り、キッチンからポットとカップをもう一つを持ってきて真向かいに座り直した。
空になっていた私のカップの次に持ってきたカップに紅茶を注ぎながら、落ち着く声色でこう言う。
「周りの大人には話せないかもしれないけど、見ての通り私は小学生……。話を聞くだけならできるし、相手が誰でも悩み事は話せばせいせいするものよ」
「あ……哀ちゃん…………!」
その心遣いが嬉しくてつい感動してしまう。
確かにその通りだ。一人で抱えた悩み事がどうなるかは、子供の私でも知っている。
彼女が小学生かどうかは別として、抽象的にでも相談を受けてもらった方がいいのかもしれない……。
「じゃあ……ぼんやりとしか話せないけど、ちょっとだけ聞いてくれる?」
そうして私は初めて「別の世界」のことを語った。
もちろんそうとはバレないように、終始ひとつひとつ発言に気をつけて。
1414人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chiroru...(プロフ) - めっちゃ素敵な小説でした!ファンになりました♡名探偵コナンで安室さんと怪盗キッドとの三角関係な小説を読んでみたいです!是非ご検討お願いします♡ (4月5日 20時) (レス) id: eb897bce76 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 夢主のイラスト見ました! かっこいい! (2023年1月8日 0時) (レス) id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 内容がしっかりしてる! 夢主好き💚 (2023年1月8日 0時) (レス) @page10 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
茉佑(プロフ) - 絵上手くないっすか?うらやますぃ(´;ω;`) (2018年5月1日 23時) (レス) id: ff89d68923 (このIDを非表示/違反報告)
ユキナ - あぁぁ…画力が神だぁ……画力わけてください、切実に…( ノД`)… (2018年4月28日 23時) (レス) id: 0f45599fe0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほろにがクラゲ | 作成日時:2017年9月11日 8時