57．最期 ページ11
それからの話の流れは早いものだった。
私の辞退を許さない父上と、王座を譲りたくない弟。
永遠と続きそうであった相続問題を父上はひとつの提案で片付けたのだ。
｢近々東の国と戦争を行おう。指揮は2人で執るんや、良いな？お前達のどちらがより王座に相応しいかを競うのだ。シュヴァルツ､最期のチャンスをやろう。グルッペンも手を抜くんじゃないぞ｣
課せられた最期の王より勅令。
｢兄様に譲るわけにはいかないのです…なんとしても僕が王に…！｣
｢王座に興味は無いが…。
宣戦布告と共に勃発した戦争。
指揮を執るのは嫌いじゃない。
むしろ｢集団指導者｣として力を発揮できるから大好きだと言わざるを得ないのかもしれないな。
戦況は上々。
我が国｢ウンターガング｣が負けるなど、余っ程の事が無ければまず有り得ないだろうな。
｢特攻軍を西へ。メディックは待機すると良いだろう｣
｢いいえ兄様､それでは参りません！メディックこそ敢えて戦場を駆け回るべきです！！｣
｢シュヴァルツは戦場慣れしていないんやから手を出すんじゃない｣
｢兄様より素晴らしい案で軍を、ウンターガングを勝利へと導いてみせます！さぁ、軍よ僕の言う事を聞くのです！！｣
父上に気に入られようと、王座を得ようと必死に私へ反抗しているつもりだろうか？
自暴自棄に陥ったとしか思えない指揮だ。
だが所詮軍が耳を貸すのは信頼のおける人望厚き弟だ。
これでは国は滅びてしまう。
だが悲惨な未来が視えても尚、強く反対意見を推そうとは思えない。
｢…この国も終わりやな｣
傍にあった国の特産品であるお気に入りの紅茶を飲んで、別れを告げて城を出た。
信頼で負けては指揮官失格やな。
そうやって自分を、母が遺してくれた金色を嘲笑しながら。
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作者名：ななし | 作成日時：2017年3月26日 16時
