【実I況I者】それはきっと、【キIヨ】II

93．鍵 ページ45

はぁっ……はぁ…はぁ……。

息が上がる。
こんなに走ったのなんて学生の時以来だ。
でも今は辛いだなんて言ってられない。
つわが待ってる…！！

隣で走ってくれるキヨもまた息を切らしながら額に汗を流している。
こんな必死な顔で駆けつけてくれる人が居るなんて、つわって愛されてるんだな…。
と、思ってみる。






家に着くとまずはじめに出てくる問題。
鍵だ。
あのつわが無用心に鍵を閉め忘れるなんて事、ある筈ない。
だからと言って病人のつわを歩かせるわけにはいかない…。

｢どうしよう…｣

｢とりあえずつわはす君呼んでみるのは？｣

｢……それしかないのかなぁ｣

安静に寝かしたままが絶対に良いけど、そんな事言ってたらいつまで経っても入れないままだし…。
私達は意を決して扉に手を掛けた。



ｶﾞﾁｬ。



開いてしまった。
吃驚して勢いよく扉を開く。
玄関にはつわが倒れていた。

｢は！？ちょ、え！？なんでつわはす君が玄関に…！？｣

｢そっそそそそれよりも今はとにかくベッドへ…！｣

｢あ、うんそうだな！！｣

つわを運ぶのはキヨに任せて、私はキッチンの確保。
久しぶりに来たけど相変わらず質素な部屋。
片付いた部屋…って言わないと怒られちゃう。

｢食材は…無いみたい。どうしよう、買ってこないと…｣

｢俺買ってくるよ。薬とかはあるの？｣

｢えっ。いいの？｣

｢うん。早く良くなって欲しいし…買うものメモしてもらっていい？｣

うん！と答えて、確かあそこにメモとペンがあったはずだと棚を漁ってみる。
ビンゴ！
それを取り出して欲しいものを綴っていく。

｢…よく来るの？｣

｢え？うん。前はよく来てたな〜、私の家よりここに集まることが多かったから｣

｢……ふぅん｣

そんな会話をして、メモを書き上げる。
これをお願いと渡した時のキヨの顔はなんとも言えない顔だった。

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