雷鳴具して恋に落つ。 (ページ22)

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21話ページ22

…A、Aの姿が見えなくなった瞬間からこうしてAを欲してしまうくらいなのに。

「なーんで気づいてくれないかなー。」

気づかないのではなく、やっぱりわからないのか。

ひとつため息をつき、ボクは確認作業に戻った。

1時間ほどして。

「よし。完璧。」

ボクのその言葉と同時に、Aが入ってきた。

「…美味しいかどうか、わからないけど」

「Aの料理は全て美味しいから問題ないよ。」

今も小さい土鍋から、美味しそうな匂いが漂っている。

「熱いから気をつけて」

とお粥がお皿に盛られ手渡されて、ボクは

「いただきます」

と言って一口啜る。

Aの料理は優しくて好きだ。

「美味しい。」

少しだるい体にしみて、得体の知れない満足感を感じた。

ほぅ、と息をついてしまうような。

「がくと、寝巻きを持ってきたからこのあとは寝てゆっくり休んで。」

「…まだ昼」

「ライブで倒れられても困るんだけど」

「…わかったよ…Aも一緒に寝てくれたら寝る」

その言葉にAはしょうがないなぁ、と言いながら一緒に横になってくれた。

…ボク、一生風邪で良いかも。