裏日常

しまセン 月が綺麗ですね ページ48

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「月が綺麗ですね」


その一言さえ言えなかった僕はとんでもなく臆病者なんだろうな





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「あ、センラさーん！」


六月の某日、たまたま名古屋にお仕事で来ていた志麻くんと久しぶりに飲むことになった

居酒屋の前で待ち合わせしようって言ったんは僕やのに遅刻してまうなんて…


「志麻くんすみません、遅なってしもて…」

「ん？ええよ、最近忙しそうやしね」


そう言って許してくれるのも彼の優しさ

クシャって笑う顔がやっぱりイケメンで、どれほどの女の子達を堕としてきたか


その事を考えるだけで胸の辺りがざわっとする

ご覧の通り僕___センラは、同じ歌い手の同じグループのメンバーである志麻くんが好き


何時からか、と言われれば分からない

多分初めてあった時から好きやったんやと思う



でも、そんな彼は


「フユカちゃん…なんであんな可愛ええの…」


絶賛専属絵師さんに恋、してはる

多分2人は両想い

それで僕は片想い


絶対に叶わない恋、なんや


嫉妬で狂いそうな醜い心を隠して、へらりと笑って

「志麻くんはホンマにフユカさんのこと好きやね」

「んー、好き、やね…。見た目もそうやけど気遣いできるところとか、性格もええし…」


なんで、なんでなんよ…

そんな幸せそうな顔して言わんといてや

好きな人の、好きな人の話なんて聞きたない…っ


嫌い、フユカさんに嫉妬してる僕が
嫌い、自分の気持ちを伝えられない僕が

嫌い、好きな人のの恋を応援できない僕が


「志麻くん…そろそろ告白、したらええんとちゃいます？」


頼むからさっさとこの恋に終止符を打ってくれ


「フユカちゃんに？もし振られたら…」

「振られたら、また僕と飲み明かしましょ」


多分飲み明かすことなんてないけど


「…センラさん、ありがと！勇気でたわ！」

「そう、ですか」


へらり、また一つ嘘をついて

なんでもないような顔をして


「センラさん！！俺、フユカちゃんと…」

「おめ、でとうございます…！」


泣きそうな顔を見ないふりして


「月が綺麗ですね…っ！」


意味を知らないことを願って


「…っ！…ごめんなぁ、月は、青いわ」


やっぱり叶わない現実を知って

月がじんわり滲んで見えてしまったのも気のせいにして




ただ貴方に好きと伝えたかっただけ___。







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しませんは叶わない恋とかシリアスが似合うと思うんですよ


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