裏日常

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コンコン


何度目かの坂田がいる病室

何回きても心臓の鼓動がが早くなる

　
慣れないなあ


そっと音を出さずに扉を開けると、まだ坂田は眠っていた


「ふぅ...」


ほっとしたような、なんだかよくわからない気持ち


そっと近づいてみるとかっこいい顔が見える


「ふふっ」


思わず笑みがこぼれる



最後にまともに会話したのいつだっけ


最後に俺をみて可愛いって言ってくれたのいつだっけ


最後に頭撫でてくれてのいつだっけ



２週間近く会ってないだけなのにこんなにも懐かしく思えるのか


俺、重いかなぁ

坂田に依存してるのかな


「んぅ....ふぁぁあ」


あ、起きた


「は？なんで..」



寝起きで声が掠れているのにはっきりとわかる機嫌の悪さ

もうどう思われたっていい


坂田には二度と会いに行かないから


逃げてたまるか

最後の日くらいかっこよく、綺麗に笑って去りたいもん



「おはよう、坂田」


「なんでお前がおるんよ」


「最後に、会いに来た」


俺がそう言うと坂田の顔が小さく歪んだ

苦しそうな、悲しそうな...でも、嬉しそうな


坂田のなかでいろんな感情が渦巻いてそう


「これでｯ、最後だからｯ、！」


「は、？」



最後の我がまま叶えてよ。坂田


「坂田、最後きゅってして笑って？」


「は？なんでそんなこと...」


「してくれたら、帰るから。二度と、来ないから。お願いっ！」


「ほんまに、来うへんねんやったら」



坂田はそう言った後少し腕を広げてくれた

俺は、坂田の腕に飛び込んだ


顔を見なくてすむように下を向いて


ぎゅっと抱きしめてくれたときの温かみで思わず涙がでそうになったけどなんとかこらえた



坂田と別れるときは笑顔で



いつかの日坂田と約束したんだ


絶対無いって坂田は言ってくれてたけどね



坂田、笑って？



その思いを読み取ったかのように坂田はふわっと微笑んでくれた

その心には二度と会わなくてすむっていう思いだけだろうけど



すると、腕がこっちへ伸びてきて


ぽんぽん、って優しく撫でてくれた



「っぅあ、さかっ、たぁ...ばいっ、ばい...！」



それだけ伝えて病室から飛び出した


涙で前が霞んでよく見えないや



ドンッ


「っ、すみませ...」


前から歩いてきた人と肩がぶつかり急いで謝ろうとすると、


「うらたさん？」



見慣れた特徴的な涙ぼくろ

志麻くんだ



「っあ、しまく、...ごめ、」



嗚咽でまともに交わせなかった言葉を残し俺は走った


今は誰にも会いたくない




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