恋の果実 (ページ22)

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その瞬間。

僅かに少し、細められた目。

“あかん…これは…あかん…”

感じたことのない感覚に耐えられず
咄嗟に目を逸らした。

臣『やったね！俺の勝ち(笑)』

くっそー…
可愛いじゃねぇか…

けど、とっても心臓に悪い。

涼『ひめー、もうちょっと頑張りなさいよ。っていうか、かれこれ二時間経つねんで。いい加減慣れたらどうなん』

『無理！登坂さんに慣れることなんて一生ない！』

呆れてる涼ちゃんに、即答した。

結局私は、腐っても
登坂広臣の大ファンなのだから。

“失礼しまーす！イケメン西日本代表入りまーす！”

元気な声と共に、健二郎くんのお戻りだ。

いきなりの引っ張るような動きに
臣くんの左手が怯み
私の右手が自由になった。

少しだけいつもの自分を
取り戻せたような気がした。

『よっ！待ってました！！！！』

自由になった手で拍手をしながら
スッキリドヤ顔の健二郎くんを盛り上げる。

健『“失礼しまーす”ってAのマネやで！分かった！？』

ヘラヘラしてる健二郎くんを見て
本当にお酒が弱いんだなと感じた。

そのことが、彼のことも本物の
山下健二郎なのだと示していた。

臣『それ、俺も思った。仕事とかで部屋に入る時とかは分かるけど、飯の席とかで“失礼します”ってあんま言わなくね？』

たしかに、そうかも。

でも…

『席を外した瞬間に、その人の噂したり悪口言ったりしません？そんな所にいきなり入って行って、嫌なこと目にしたり耳にしたりすんの嫌じゃないですか。ノックして声かけて入ったら、中の人も入る人も心の準備出来るからいいと思いません？』

なぜだろう。

目の前にいる臣くんの目をジッと見つめ
しっかりとハッキリと答えることが出来た。