S-19:臣SIDE ページ20
合わない。
合いやしない。
全くもって合わない目線。
目の前に座る彼女は
顔と体を斜めに向けて座り
ビールとタコワサをお供に
健二郎くんのモノマネに夢中になっていた。
こっちむけー
こっちむけー
こっちむけー
目を細めて念力を送るものの
全くもってこっちを見る気配はない。
なんなの。
しつこいようだけど
俺のファンじゃないの?
俺、超絶つまんねーんだけど。
健二郎くんのモノマネなんて見飽きたし。
あ、でも玉置浩二は初めてみたけど
クオリティが高すぎて笑えた。
“ひっこめ、ニセモノ!”
玉置浩二のファンだという
涼子さんだけが厳しいヤジを飛ばしていた。
早めに抜けて
瑠美に連絡してみっかなー。
iPhoneを手にし、この後合流する彼女の
アドレスを引っ張り出そうとした。
“ひーっひーっひーっ!!!”
惜しげもなく披露される引き笑い。
それと同時に伸ばされる右手。
テーブルの上を彷徨う右手は
喉を潤すためのビールジョッキを探している。
悪戯心に火がつく。
彷徨いながらもお目当てのものに
ありつけない右手をiPhoneを持っていない
反対の手でギュッと握ってみた。
マシュマロ。
うわぁ…めっちゃキモチいいし(笑)
想像を超えた触り心地に
俺のニギニギが止まらない。
ニギニギして
左右にフリフリしてみる。
ここまでしても
こっち見ねぇのかよ!
『ちょっとー。全くこっち見ないけどー』
ちょっと甘えた口調で言う俺を
面白そうな顔で涼子さんが眺めていた。
A『登坂さん!私ホンマに無理ですからやめてください!恥ずかしすぎて、登坂さんの顔見れません!』
赤い顔の正体は
酒のせいだけではないだろう。
照れてるのが丸わかりの顔を見て
見慣れて来たからなのだろうか…
それとも酔いが回ってきたのだろうか…
“痩せたら可愛いのになー”
俺は、そんなことを思うようになっていた。
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作者名:KBZ | 作成日時:2015年10月4日 19時