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S-15 ページ16

戸を後手に慌てて閉めて
早歩きのすり足で席に戻り
掘りごたつに足を収めてキチンと座る。



“く、くつしたが…右が黒で…左が紺で…”



目の前の取り皿を見つめながら
ボソボソと呟く私に、隣りから一言。



涼『誰も見てへん』





うん、落ち着いた。





臣『ねぇ、いい加減注文しねぇ…?』



生声きた。
破壊力が半端ない。
そしてまだ注文してなかったんかい!



さぁ!魔法の言葉を唱えよう!



私には話しかけていない。
私には話しかけていない。
私には話しかけて…



臣『Aちゃん?Aちゃーん?おーい?』





Aちゃーん、呼ばれてますよ?





相変わらず私の目線の先には、取り皿。

その目線の先に、ひらひら。


ん?ひらひら??


そのひらひらしたものに、目線を合わせると
目の前の美しい男と…目が合った。





凄い目力。
引き寄せられるような目。
テレビやDVDでは、よく見るその目。
あいにく、LIVEでは神席なんか縁がなかったので
生でこの目を見るのは初めてだった。

しかもこんな近くで…


無音の世界に包まれる。
聞こえるのは、彼の声と息づかい。

もう一度、目の前にひらひらとしたものが…
その正体は、彼の手だった。



臣『おーい?Aちゃん?見えてる?聞こえてる?何飲む?』


想像してたよりも、優しく話しかけられて
少しだけ意識が戻ってきた気がした。



『大丈夫です。登坂さんの手が見えてます。私…ビールにします』





ひらひらとする度に
鼻をかすめる、彼のものであろう香り。



これ以上はダメだと思った。
恥ずかしくてどうしようもない。

誰に迷惑をかけてるわけでもない。
これが私だし別にどう思われてもいい。


そうやってきた8年間を嘲笑うかのように…


彼の目に映る自分の姿を想像すると
恥ずかしくて仕方なかった。

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作者名:KBZ | 作成日時:2015年10月4日 19時

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