◇ ページ37
インターホンを押すと、扉はすぐに開いた。
『 あ…大ちゃん、 』
大「 …来ると思ってた。 」
静かに笑ったあと、
彼は私を部屋に招き入れた。
出してもらったお茶にも手を付けず
ただ黙って下を向く私に、大ちゃんは静かに声をかける。
大「 …俺に、なんか話したいことあるんでしょ? 」
『 あ…うん、あの… 』
大「 山田先生のこと? 」
『 …そう。 』
大ちゃんは、もう全てわかっている様子だった。
" いいよ、ゆっくりで " と柔らかい表情で私の目を見てくれる。
私は、覚悟を決めた。
『 大ちゃんと出会った時、私一瞬で目を奪われて、
サッカーしてる大ちゃん見てたら、好きになってた。
大ちゃんと初めて会話したあの日、誕プレ渡せるだけで満足だったのに、一緒に帰ったりたくさん話したり、本当に幸せだった
その幸せは、付き合ってるときも同じで、
大ちゃんと過ごす時間は本当に楽しくて、早かった 』
大「 うん。おれも 」
『 だけど…、自分でもまだわからないの、でも、
山田先生といる時間が…心地良くて、でもちょっと胸が苦しくて、
──── " 好き " って感情が当てはまっちゃって…
だから、ごめんなさい。わたしと…別れてください 』
大「 …そっか。やっと素直になったんだね。
山田先生にキスされた日さ、俺Aちゃんのこと連れ出したでしょ?
あの日は、まじで山田先生に近付けたくなくて、必死だった。
でもそれってさ、俺の自己満足だったんだなって思ったんだよ。
Aちゃん見てて、山田先生のこと想ってるの伝わってきて、でも頑なにそれを認めようとしないのは、あの日俺があんなこと言ったからなのかなって。
Aちゃんから自由を奪いたくなかった。だから、素直になっていいよって言った。
俺から別れを告げたようなもんだね。 」
そう言って彼はまた笑った。
その笑みは、必死に悲しさを紛らわしているようで、心が締め付けられた。
『 ありがとう、大ちゃん 』
私も笑って、
円満なさようならを。
大「 1つお願いがある 」
『 なに? 』
大「 これからもAちゃんのこと、
好きなままでいてもいい? 」
『 …もちろん 』
大「 ありがと 」
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作者名:いちごだいふく。 | 作成日時:2018年12月25日 18時